エアレスタイヤの構造を解説←空気入りタイヤと何が違うの?

[word_balloon id=”3″ size=”M” position=”L” name_position=”under_avatar” radius=”false” balloon=”think” balloon_shadow=”true”]エアレスタイヤの構造ってどうなっているんだろう?従来の空気入りタイヤとの違いを知りたいな。[/word_balloon]

 

こういった疑問に答えます。

私はタイヤエンジニア歴10年ほど、昨年まで某タイヤメーカーでタイヤの構造設計を本業としていました。プロの視点から初心者向けに解説しますね。

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エアレスタイヤの構造を解説

エアレスタイヤの構造

エアレスタイヤは次の4つの部材から構成されています。

  • ①トレッドリング
  • ②スポーク(ブレード)
  • ③外径リング
  • ④ゴムと樹脂の接着層
トーヨータイヤ「noair(ノアイア)」

トーヨータイヤ「noair(ノアイア)」

 

これからまとめる情報は、エアレスタイヤ開発に注力しているブリヂストンや住友ゴム(ダンロップ・ファルケン)、トーヨータイヤのサイトから知識を得ました。下記に参考記事のリンクを貼っています。

 

 

 

 

エアレスタイヤの構造:①トレッドリング

トレッドリングはタイヤが路面に接してグリップする部分で、タイヤの運動特性や摩耗性能、燃費(転がり抵抗)などといったタイヤの基本性能に大きく影響する重要な部材です。

トレッドリングには従来の空気入りタイヤと同様、基本的には同じゴムが用いら、排水性確保のためパターン(溝)が彫られています。

近年のトレンドとして、低燃費(低転がり抵抗)を各タイヤメーカーは最も重要視していると思われます。

エアレスタイヤの構造:②スポーク(ブレード)

ブリヂストン「エアフリーコンセプト」

ブリヂストン「エアフリーコンセプト」

スポーク(ブレード)はその名の通り、トレッドとホイールをつなぐ部材です。
しかし、自転車のスポークとは素材や役割の点で大きく異なります。

  • 熱可塑性樹脂という、とても耐久性の高いプラスチックのような素材が使われていること
  • 複雑な形状、スポークが変形をすることで路面からの衝撃を吸収

 

スポーク(ブレード)の素材や形状によってその耐久性や乗り心地性能が左右されるため、スポーク(ブレード)開発はエアレスタイヤの重要なポイントの1つと考えられます。

このスポーク(ブレード)形状は各タイヤメーカーによっても特色があり、ここに多くの技術が注がれていることが見てとれます。

各メーカーのスポーク形状の特徴についてはコチラの記事にまとめています。

 

~~~現在、記事執筆中~~~

 

エアレスタイヤの構造:③外径リング

外径リングはトレッドリングとスポーク(ブレード)の中間に位置する、リング状の樹脂パーツのことです。

外径リングの樹脂には鉄やアルミなどの金属材料よりも強度が高く、かつ、重量の軽いCFRP(カーボン繊維強化プラスチック;carbon fiber reinforced plastic)が混ざっており、強度を高めスポーク(ブレード)への負荷を軽減させる役割があります。

エアレスタイヤの構造:④ゴムと樹脂の接着層

トレッドリングの『ゴム』とスポークや外径リングの『樹脂』という異なる材料をつなぐことは一般的にはできません。

エアレスタイヤにはそれら強くつなぎとめるため、ゴムと樹脂の間に接着層が設けられています。この接着層は外観からは簡単には見えないほど薄い層です。

 

ちなみに住友ゴムの材料開発では、接着剤の種類の研究だけでなくトレッドリングのゴム自体が接着層とくっつきやすくなるような改良も施されているらしい。

数えきれない種類の接着剤を試したものの、なかなか思うような結果が得られず、大きな壁に行く手を遮られた時もあった。『そこで思いきって発想を転換し、接着剤そのものだけではなく、ゴムの素材配合にまで踏み込んで接着しやすくなるように配合を改良しました』

エアレスタイヤは今までにない課題が多く、とてもチャレンジングな新技術である様子が伺えますね。

 

 

エアレスタイヤと空気入りタイヤの違い

見た目にも全く異なるエアレスタイヤですが、従来のタイヤと『空気が必要か否か』という以外にも違いがあります。

ここでは『材料面』『荷重の支え方』『エアレスタイヤのメリット/デメリット』という3つの切り口から、従来のタイヤとの違いをまとめます。

材料面

エアレスタイヤは先述の通り、次の素材でタイヤが作られます。

  • ゴム
  • 熱可塑性樹脂
  • 接着層

 

一方で、従来の空気入りタイヤは次の素材が用いられます。

  • ゴム
  • スチールのコード
  • ナイロンやアラミドなどの繊維材

 

空気入りタイヤはその大半がゴムで形作られていますが、外からは見えないゴムの中にスチールや繊維材も使われています。

これは空気を入れた後にタイヤを最適な形に保持する、リムとタイヤをしっかりと固定するなどのために用いられます。空気入りタイヤの構造や名称については、メーカーサイトに詳細に書かれています。

 

 

エアレスタイヤには従来のスチールや繊維材が排され、代わりにプラスチックのような樹脂が用いられます。
これにより今までの廃棄タイヤにはなかったリサイクルという発想を生み出すことが可能になります、ペットボトルのリサイクルと同じですね

またリサイクルが難しい『ゴム』の使用量についても、エアレスタイヤはトレッド部のみに使用され量が少ないです、エアレスタイヤが環境にやさしいと考えられる理由はここにあります。

ちなみに、ゴムに多く使われている”天然ゴム”の生産は自然の森を破壊する環境問題の1つでもあり、環境保全活動が世界100か国以上で活動しています。参考記事を下記リンクに載せています、ご参考まで。

 

 

荷重の支え方

エアレスタイヤと空気入りタイヤでは荷重の支え方でも大きく異なります。

空気入りタイヤは文字通り、タイヤに荷重負荷がかかった時には中に蓄えられている空気が主に仕事をしています。パンクするとタイヤがペチャンコになってしまうことから理解できますね。

タイヤの推奨空気圧は車ごとに車両メーカーから推奨されていて、一般車用タイヤの場合は200~250kPa程度、トラック・バス用タイヤでは700~800kPa程度が相場です。

これは想定される車の重量や積載量によって推奨空気圧は決められています、タイヤではロードインデックスという数字が最大負荷能力を表す指標になっています。

 

 

逆にエアレスタイヤは熱可塑性樹脂で作られている『スポーク(ブレード)』『外径リング』が荷重で荷重を支える役割を果たします。

空気と樹脂の一番の違いは”形の自由度”です。車の重さだけでなく、段差や轍を乗り越えたりハンドルを切るなどの際にはタイヤに入力が入ります。

ミシュラン Michelin アプティス・プロトタイプ Uptis Prototype

ミシュラン アプティス・プロトタイプ

空気であればその衝撃を「いなす」ように吸収することができ、乗り心地性能や操縦安定性をたもつことができます。

しかし空気のないエアレスタイヤにはその役割を主に『スポーク(ブレード)』で果たす必要があります、各タイヤメーカーの技術力はこのスポーク(ブレード)形状に現れてきそうです。

エアレスタイヤのメリット/デメリット

その他、従来の空気入りタイヤに対するエアレスタイヤのメリット/デメリットは下記の通りです。

エアレスタイヤのメリット

パンクしない / スペアタイヤを載せる必要がない / メンテナンスフリー / 更生タイヤとして使用できる(リトレッド) / 低燃費 / 環境にやさしい

 

エアレスタイヤのデメリット

乗り心地が悪い / 重い荷物は載せられない / 価格が高い / 操縦性が悪い / お洒落なリムが選べない

 

こんな感じ。エアレスタイヤはまだまだ技術的には十分に熟成されていないって印象です。

≫参考:エアレスタイヤのメリット/デメリットは?←タイヤの概念が変わります

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エアレスタイヤの構造を解説|まとめ

以上、エアレスタイヤの構造についての解説でした。

従来の空気入りタイヤとは構造やその機能が大きく異なることが分かったでしょうか。

まだまだ自動車への実用化に向けては多くのハードルが残っていると考えられるエアレスタイヤですが、各タイヤメーカーの今後の頑張りに期待したいところです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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