撹拌翼の種類と特徴:小型翼と大型翼の使い分け

化学工学
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概要

撹拌翼とは、タンクや槽に取り付けられ、液体を撹拌して混合を促進するために回転する装置の一部です。

撹拌翼の形状や種類によって、液体の混ざり方や撹拌効率が大きく変わります。
適切な撹拌翼を選定することは、撹拌プロセス全体の効率を左右する非常に重要な要素です。

撹拌翼が不適切だと、回転数を上げても混合効率が改善しないことが多々あります。

また、撹拌する液体の粘度が変わった場合にも、適切な撹拌翼に変更しないと混合がうまくいかないことがあります。
撹拌槽設計の初期段階で適切な撹拌翼を選定することが不可欠です。


撹拌翼の種類

撹拌翼は、混合する物質の性質や目的に応じて様々な形状が存在し、小型翼と大型翼に分類されます。

それぞれの特徴やフローパターン(液体の流れの特徴)を理解することが、撹拌効率を最大化するために必要です。


小型翼

小型翼は主に低粘度液に使用されます。コストが安く、バッフル(流れを制御する板)を設置して使用することが一般的です。

フローパターンとしては、水平方向に流れが広がり、壁面に当たることで上下の流れが生じます。

混合速度がそれほど重要でないシステムに適しています。

平パドル翼

2枚または4枚の平板が撹拌軸に取り付けられた翼です。構造がシンプルで、ラボスケールから工業生産まで幅広く使用されます。

  • 特徴: 水平方向に液を吐出し、上下に流れが分かれる。混合は遅いが、時間をかければ均一に混ざる。
  • 用途: 反応速度が遅い系や、混合時間が長くても問題ないプロセスに向いています。
傾斜パドル翼(ピッチドパドル翼)

平パドル翼を傾斜させた構造で、45°や30°の角度で液をかき下ろすように設計されています。

  • 特徴: 良好な上下流を生み、混合効率が高い。翼の真下にデッドスペースができやすいが、回転数を上げれば解決可能。
  • 用途: 粘度が低く、上下均一な混合が必要なプロセスに適しています。
ラシュトンタービン翼

円板に垂直にパドルが取り付けられた翼です。気液撹拌に最適で、ガスのホールドアップを増やす効果があります。

  • 特徴: ガスを細かく砕いて接触効率を上げることができる。平パドル翼と同様のフローパターン。
  • 用途: 気液撹拌プロセスに適しています。
プロペラ翼

船のプロペラのような形状をしており、固液撹拌で沈降粒子を巻き上げるのに適しています。

  • 特徴: 槽底での流れが速く、固体の分散に向いている。滑らかな形状で動力効率が良い。
  • 用途: 小型撹拌槽や固液撹拌プロセスに適しています。
3枚後退翼(ファウドラー翼)

湾曲した平板を3枚取り付けた翼で、撹拌槽の底部に設置されます。

  • 特徴: 上下の流れをゆるやかに循環させ、低動力で固体を浮遊させることが可能。
  • 用途: 固液撹拌に適しています。

大型翼

大型翼は中粘度から高粘度液の撹拌に使用されます。

粘度が高い液体では、撹拌翼が生み出す流れがすぐに減衰してしまうため、翼自体を大きくして物理的に流れを確保します。

アンカー翼

錨(アンカー)形状の撹拌翼で、翼径が槽径の80~90%と非常に大きなサイズです。

  • 特徴: 基本的には旋回流が支配的で、上下の流れが少ない。性能は他の大型翼と比較して低め。
  • 用途: 高粘度の流体を撹拌する場合に使用。
ヘリカルリボン翼

螺旋状の薄板を撹拌軸に巻き付けた翼です。ダブルリボンタイプもあり、より強力な上下流を作り出します。

  • 特徴: 複雑な構造で高価だが、上下の液循環が良好で混合性が高い。
  • 用途: 高粘度の液体で均一な混合が求められる場合に最適です。
スクリュー翼

小型で螺旋状の翼が撹拌軸に取り付けられており、固体・粉体の輸送にも利用されます。

  • 特徴: 直径の小さな螺旋翼で、液体を押し出す力が強い。
  • 用途: 小型の高粘度撹拌や粉体輸送に向いています。
MAXBLEND

住友重機械プロセス機器(株)が開発した大型撹拌翼です。
広い粘度範囲に対応でき、せん断力を抑えながら混合できます。

  • 特徴: 強い吐出力と細かい分散効果で、高性能な混合が可能。低せん断が求められるプロセスに適しています。
  • 用途: 晶析や重合など、せん断に弱い粒子を扱う系に最適。
スーパーミックス (MR205)

佐竹化学機械工業(株)の製品で、台形の大きな翼と小型の翼を組み合わせたデザインが特徴です。

  • 特徴: 強力な上下流を生み出し、混合性能が高い。幅広い用途で使用可能。
  • 用途: 高い混合効率が必要なプロセスに適しています。
フルゾーン

(株)神鋼環境ソリューションの製品で、大型のパドル翼が立体的に配置されています。

  • 特徴: 上下に強い循環流を形成し、均一混合が容易に行えます。
  • 用途: 広範な粘度範囲で、低せん断が必要なプロセスに向いています。

小型翼と大型翼の使い分け

  • 小型翼
    低粘度液の撹拌や小型の撹拌槽で効率的に運転できます。
    コストが安く、反応速度が遅いプロセスや均一混合が求められない場合に適しています。
  • 大型翼
    高粘度の液体で、混合効率が求められる場合に使用されます。
    せん断力を抑えながら均一に混合する能力があり、広範なプロセスに対応可能です。

まとめ

撹拌翼の選定は、撹拌プロセスの効率を左右する重要な要素です。
液体の粘度や撹拌槽のサイズに応じて適切な翼を選ぶことで、混合の質や効率を大幅に向上させることが可能です。

撹拌翼の種類と特徴を理解し、目的に合った選定を行うことが成功の鍵となります。

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