撹拌ウェーバー数とは:撹拌時の液滴分裂と制御における基本知識

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撹拌ウェーバー数

撹拌ウェーバー数(We)は、液液混合系で液滴の大きさや分裂の指標となる無次元数です。

化学プロセスにおいて、撹拌翼の回転によりどの程度の液滴が生成されるかを予測・制御するために用いられます。

本記事では、撹拌ウェーバー数の基本的な考え方や計算式、その導出過程について解説します。


撹拌ウェーバー数の定義

撹拌ウェーバー数(We)は、以下の式で定義されます。

$$
We = \frac{ \rho_c \cdot n^2 \cdot d^3 }{ \sigma }
$$

  • \( \rho_c \) :連続相の密度(kg/m³)
  • \( n \) :撹拌回転数(1/s)
  • \( d \) :撹拌翼の直径(m)
  • \( \sigma \) :表面張力(N/m)

この式は、撹拌翼の回転による液滴の生成や分裂を評価するための指標となります。

慣性力表面張力のバランスに基づき、液滴が分裂するかどうか、どの大きさの液滴が生じるかを推定します。


液滴径と撹拌ウェーバー数の関係

撹拌により生じる液滴の体面積平均径(d32)は、次の関係式で表されます。

$$
\frac{ d_{32} }{ d } = C \cdot We^{- \frac{3}{5} }
$$

  • \( d_{32} \) :体面積平均の液滴径(m)
  • \( C \) :定数(系に依存)
  • \( We \) :撹拌ウェーバー数

この式により、撹拌ウェーバー数(We)を用いることで、液滴のサイズを予測することができます。

Weが大きいほど、撹拌によるせん断力が強くなり、液滴が分裂しやすくなります。
その結果、生成される液滴のサイズは小さくなります。

ただし、実際のプロセスでは、取り扱う系に応じて異なる結果が出る場合があるため、実験データをもとに定数 \( C \) や指数を調整することが望ましいです。


撹拌ウェーバー数の導出

撹拌ウェーバー数の導出は、通常のウェーバー数(We)から発展しています。

通常のウェーバー数は、慣性力と表面張力の比として定義され、以下のように表されます。

$$
We = \frac{ \rho \cdot V^2 \cdot L }{ \sigma }
$$

  • \( \rho \) :分散相の密度(kg/m³)
  • \( V \) :代表速度(m/s)
  • \( L \) :代表長さ(m)
  • \( \sigma \) :表面張力(N/m)

Weは、液滴の分裂しやすさを示す指標であり、Weが大きいほど液滴が分裂しやすくなります。
この考え方を撹拌系に応用することで、撹拌ウェーバー数が導かれます。

一般系のウェーバー数の詳細な説明はこちら

液滴分裂の条件

液滴が分裂するかどうかは、以下の3つの力のバランスによって決まります。

  1. 動圧変動やせん断力(液滴にかかる外力)
  2. 液滴の界面圧
  3. 液滴内の粘性応力

これらの力のバランスが臨界値を超えると、液滴は分裂します。

この時、臨界ウェーバー数(Wecrit)は以下の式で表されます。

$$
We_{crit} = C \cdot \left[ 1 + f(N_{vi}) \right]
$$

  • \( We_{crit} \) :臨界ウェーバー数
  • \( C \) :定数
  • \( N_{vi} \) :無次元粘性グループ

粘性の影響が小さい場合、この式は簡略化され、次のように表されます。

$$
We_{crit} \approx C
$$


撹拌ウェーバー数の適用

撹拌ウェーバー数は、液液混合系において、撹拌によって生成される液滴の大きさを予測するために重要です。

特に、液滴の生成や分裂を制御したい場合には、撹拌ウェーバー数を利用することで、撹拌回転数や撹拌翼の設計を最適化することができます。

例えば、撹拌翼の直径や回転数を調整することで、液滴径を制御し、目的の分散状態を得ることができます。

また、プロセスのスケールアップ時にも、撹拌ウェーバー数を用いて液滴径の予測を行うことで、適切な撹拌条件を設定することができます。


まとめ

撹拌ウェーバー数(We)は、液液混合系において、撹拌によって生成される液滴のサイズや分裂を予測するための重要な指標です。

慣性力と表面張力のバランスを基にしており、液滴の分裂しやすさや大きさを制御する際に利用されます。

撹拌プロセスの設計や運転条件の最適化を行う際には、撹拌ウェーバー数を活用することで、より効率的な液滴分散を実現することが可能です。

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