CFDの乱流モデルの種類

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CFD(計算流体力学)は、複雑な流体の挙動をシミュレーションするための強力なツールです。特に乱流は、流体力学において非常に重要であり、正確に予測するために様々な乱流モデルが使用されます。

本記事では、CFDで使用される主要な乱流モデルについて詳しく解説します。

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乱流の基本概念

乱流は、流体の流れが不規則で混沌としている状態を指します。

乱流は、速度、圧力、温度などが時間と共に複雑に変動し、予測が難しいのが特徴です。このため、乱流を正確にシミュレートするためには、適切なモデルが必要です。

乱流モデルの概要

乱流モデルは、乱流の複雑な挙動を近似するために使用されます。乱流のすべてのスケールを直接計算するのは現実的ではないため、乱流モデルは異なるスケールの流れを効率的に解析するための近似手法を提供します。

乱流モデルの種類

1. Direct Numerical Simulation(DNS)

定義と特徴

Direct Numerical Simulation(DNS)は、流体のすべてのスケールを直接シミュレートする方法です。DNSは、ナビエ・ストークス方程式を高解像度で直接解き、乱流のすべての渦や動きを計算します。

理論的には最も精度の高い乱流解析手法ですが、非常に高い計算コストがかかるため、主に学術研究や非常に細かい流れの解析に使用されます。

メリットとデメリット
  • メリット: 極めて高い精度で乱流をシミュレート可能。
  • デメリット: 巨大な計算リソースが必要で、実用的な工学問題には向いていない。

2. ラージエディシミュレーション(LES)

定義と特徴

ラージエディシミュレーション(Large Eddy Simulation, LES)は、大きな渦を直接シミュレートし、小さな渦の影響をサブグリッドモデルで近似する手法です。これにより、DNSよりも計算コストを抑えつつ、乱流の主要な構造を高精度で再現することが可能です。

適用範囲、メリットとデメリット
  • 適用範囲: 高精度が求められるが、DNSほどの計算コストを避けたい場合。
  • メリット: 大きな渦を直接解くことで、乱流の重要な動態を捉えることができる。
  • デメリット: DNSに比べればコストは低いものの、依然として高い計算資源が必要。

3. レイノルズ平均ナビエ・ストークス(RANS)モデル

定義と特徴

レイノルズ平均ナビエ・ストークス(RANS)モデルは、乱流の影響を平均化して、時間平均のナビエ・ストークス方程式を解く手法です。RANSモデルは、流れの平均的な特性を捉えるため、計算コストが低く、広範囲の工学問題に適しています。

メリットとデメリット
  • メリット: 計算コストが低く、一般的な工学問題に適している。設計や最適化に広く使用される。
  • デメリット: 乱流の詳細な構造を捉えることが難しく、精度が低い場合がある。
RANSの代表的なモデル
  • k-εモデル: 乱流エネルギー(k)とその消散率(ε)をモデル化する基本的なRANSモデル。設計や解析で広く用いられ、特に定常流に適している。
  • k-ωモデル: 乱流エネルギー(k)と乱流渦度(ω)をモデル化するRANSモデル。k-εモデルよりも壁面近傍の解析に優れており、特に低Reynolds数領域での性能が向上している。
  • SST(Shear Stress Transport)モデル: k-εモデルとk-ωモデルを組み合わせたハイブリッドモデル。壁面近傍ではk-ωモデルを、遠方の流れにはk-εモデルを適用し、それぞれのモデルの強みを活かしている。

4. Detached Eddy Simulation(DES)

定義と特徴

Detached Eddy Simulation(DES)は、RANSモデルとLESのハイブリッド手法で、流れの特性に応じてこれらのモデルを使い分けます。

壁面近傍ではRANSモデルを適用し、遠方ではLESを用いることで、計算コストを抑えながらも高精度な乱流解析を実現します。

メリットとデメリット
  • メリット: RANSとLESの強みを活かし、効率と精度のバランスが良い。
  • デメリット: モデルの切り替え部分での精度や適用条件に注意が必要。

乱流モデルの選択基準

乱流モデルの選択は、解析対象や目的に応じて慎重に行う必要があります。以下の要因が考慮されます:

  • 計算リソース: 利用可能な計算資源に応じて、モデルの選択が行われます。
  • 解析精度: 必要な精度に応じて、DNS、LES、RANSのいずれかが選択されます。
  • 流れの特性: 流れの速度、圧力、温度などに応じて、最適なモデルを選びます。

まとめ

CFDの乱流モデルは、複雑な乱流をシミュレーションするために欠かせないツールです。各モデルには特徴と適用範囲があり、目的に応じた適切なモデルの選択が成功の鍵となります。この記事を通じて、CFDにおける乱流モデルの基本的な理解が深まることを願っています。

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