散水システムは、農業や庭園管理、工業プロセスなど、多岐にわたる用途で使用されています。
効率的な水供給を実現するためには、配管内の水流を正確に予測し、最適な設計を行うことが重要です。
本記事では、散水管内の流れをシミュレーションした解析事例を紹介し、その結果から得られるインサイトについて解説します。
流れ解析の概要
今回の解析では、流体解析ソフトウェアCFD(Computational Fluid Dynamics)を使用し、散水管内の水流のシミュレーションを行いました。
具体的には、配管内の流速分布、圧力損失、渦流の発生などを数値的に解析し、設計の最適化に役立つ情報が収集できます。
解析情報
基本情報
- ソフトウェア : SIEMENS STAR-CCM+
- メッシュ : ポリヘドラルメッシュ、プリズムレイヤー(3次元モデル)
- セル数 : 約150,000
物理モデル
- 手法:定常解析
- 流体:非圧縮性液体
- 流れ:分離型流れ
- 乱流モデル : RANS, k-ε モデル
- 重力:自重による液滴生成と落下を考慮
境界条件、他
- 入口境界条件 : パイプの左面より、流速 0.5 [m/s] の水が流入。入口面がΦ 7.5 なので、流量 約1.3 [L/s] に相当します。
- 出口境界条件 : 小孔の出口面は開放 (ゲージ圧力ゼロ)
- 小孔 : Φ1.0 の小孔を、等間隔に16個配置。これらの小孔から水が噴出されます。
- 散水管の流入面と反対側(奥側)は蓋となっています。
解析結果
以下の画像は、散水管内の水の流れ(流速分布)を可視化したものです。
上段は水が流入する付近の拡大図であり、下段は散水管の奥の拡大図になっています。
流速分布に関して、散水管の小孔を比較すると、流入部と散水管奥で流速分布の様相が異なる(流速分布が均一ではない)ことが確認できます。これは、システムの設計や運用において改良が必要な可能性を示唆しています。
流速コンター図に流線を重ねたイメージを見ると、その理由が何となく理解できるのではないでしょうか。
また、明確には確認できませんが、散水口付近の高流速領域から周囲へ影響が及び、渦流が発生している可能性も考えられます。これにより、局所的な流れの不安定性が発生し、効率的な散水が阻害される恐れがあります。
非定常解析への変更やメッシュサイズの見直しなどにより、さらに詳細な流れを再現することができるかもしれません。
まとめ
この解析事例を通じて、散水管の設計におけるシミュレーションの重要性が再認識されました。
CFDを活用することで、設計段階で潜在的な問題を予測し、改善策を講じることが可能です。
このシミュレーションの手法と得られた知見は、以下のような場面で応用可能です。
- 農業用灌漑システム: 農地全体に均一に水を供給するため、配管内の水流の解析を行うことで、効率的な灌漑システムの設計が可能です。
- 工業用冷却システム: 工場内の設備を効果的に冷却するための配管設計において、流速分布や圧力損失を最適化するためにCFD解析が役立ちます。
- 都市の給水システム: 都市の大規模な給水ネットワークでの水流シミュレーションにより、圧力損失を抑えながら、全域に安定した水供給を確保するための設計改善が可能です。
これらの例は、散水管内の流れシミュレーションが、さまざまな規模や用途に応じた設計の最適化に役立つことを示しています。
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