撹拌槽のジャケットとは:効果的な温度制御の鍵を解説

化学工学
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撹拌槽のジャケット

撹拌槽は、製薬、食品、化学工業などさまざまなプロセスで使われる重要な装置です。

その中でも、「ジャケット」は撹拌槽の温度制御を行うための重要な役割を担っています。

この記事では、撹拌槽のジャケットについて詳しく解説し、その種類や特徴、適用場面などについて紹介します。

ジャケットの役割

ジャケットとは、撹拌槽の外壁に設けられた、温度制御用の用役(加熱・冷却媒体)を流すためのスペースのことです。

撹拌槽内の内容物の温度を調節するため、ジャケットに流れる熱媒(スチームや冷却水など)を通じて、効率的に加熱・冷却を行います。

ジャケットを使った伝熱は、撹拌槽の温度制御方法として最も一般的です。
ジャケットの利点は、槽内部に設置する装置(例えば内部コイル)とは異なり、撹拌槽内の流動状態に影響を与えることなく温度制御ができる点です。

しかし、撹拌槽が大型化すると、ジャケットによる伝熱面積が足りなくなるため、伝熱効率の低下が問題となります。

このような場合、内部コイルや外部循環式の熱交換器を併用することで伝熱能力を補強する必要があります。

ジャケットに使用される主な用役

ジャケットに流れる用役は、温度制御のための媒体であり、以下のような種類がよく使用されます。

  • 加熱源
    • スチーム(120~250℃)
    • 温水(60~120℃)
    • 熱媒油(150~300℃)
  • 冷却源
    • 冷却塔冷却水(20~30℃)
    • チラー水(5~10℃)
    • ブライン(-20~0℃)

これらの用役を適切に選択し、プロセスに応じた温度制御が行われます。

ジャケットの種類と特徴

撹拌槽のジャケットにはいくつかの種類があり、それぞれ特定の用途やプロセスに適しています。

ここでは、代表的なジャケットの種類について解説します。

1. 平板ジャケット

平板ジャケットは、内部に仕切りがない最も一般的なジャケットです。

主に低圧スチームを使用した加熱に利用されます。

平板ジャケットに液体を流すケースもありますが、これは本来の用途ではなく、装置の転用として行われることが多いです。

平板ジャケットの詳細な説明はこちら

もし液体を流すことが初めから分かっている場合、スパイラルジャケットを選択した方が効率的です。

2. スパイラルジャケット

スパイラルジャケットは、ジャケット内に螺旋状の仕切りを設けた構造です。

この仕切りにより、周方向の流速が増加し、結果として境膜伝熱係数が大きくなるため、伝熱効率が向上します。

主に冷却水を流す用途で使用されることが多く、冷却効率の向上が期待できます。

ただし、スパイラルジャケットは構造上、製作の際に多少の隙間が生じるため、流体がショートパス(最短経路を流れる)し、伝熱効率が若干低下する可能性があります。

3. 半割パイプジャケット

半割パイプジャケットは、半分に割ったパイプを螺旋状に設置したジャケットです。

スパイラルジャケットと同様、流路が小さいため、高い境膜伝熱係数を得ることができます。

また、高圧スチームを使用する場面でもよく採用されます。

半割パイプジャケットの詳細な説明はこちら
4. 内部ジャケット

通常のジャケットは槽の外側に設置されますが、内部ジャケットは撹拌槽の内側に設置される特殊なタイプです。

槽壁が厚い場合、外側にジャケットを設置すると熱抵抗が増加して伝熱効率が低下します。

この問題を解決するため、内部に薄いジャケットを設置し、伝熱性能を向上させることが可能です。

内部ジャケットの詳細な説明はこちら

まとめ

撹拌槽の温度制御において、ジャケットは重要な役割を果たします。ジャケットの選定と用役の適切な選択によって、プロセスの効率と品質が大きく影響を受けます。

最適な伝熱効率を得るためには、撹拌槽のサイズやプロセスの要求に応じて、ジャケットの種類や追加の伝熱装置を適切に組み合わせることが重要です。

撹拌槽の設計や運用において、ジャケットによる伝熱が不十分にならないよう、慎重な検討が必要です。
設計段階からしっかりと計算し、プロセス側よりも十分大きい境膜伝熱係数を確保することが、成功の鍵となるでしょう。

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