ステファン・ボルツマンの法則について詳しく解説

化学工学

ステファン・ボルツマンの法則は、物理学や工学において放射伝熱計算を行う際に非常に重要な法則の一つです。

本記事では、この法則について理論的な背景や導出方法を含め、詳細に解説します。

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概要

ステファン・ボルツマンの法則は、絶対温度 T の黒体が放射するエネルギー Eb が、その温度の 4 乗に比例することを示しています。

数式で表すと、以下のようになります。

Eb=σT4

ここで、

  • Eb :全放射エネルギー(輻射エネルギー) [W/m2]
  • T :絶対温度 [K]
  • σ :ステファン・ボルツマン定数 [W/(m2K4)]

ステファン・ボルツマン定数 σ の値は、次のように定義されます。

σ=5.67×108W/(m2K4)

この法則は、特に高温環境での輻射伝熱計算において基本的な法則となります。

たとえば、工業炉のように非常に高温な環境では、この放射エネルギーの影響を無視することはできません。

放射エネルギーの温度依存性

ステファン・ボルツマンの法則に基づくと、全放射エネルギーは温度の 4 乗に比例します。

つまり、温度が少し上昇するだけでも放射エネルギーは大幅に増加します。
このため、温度が極端に高い状況では、放射による伝熱が非常に大きくなることが分かります。

逆に、常温付近では放射エネルギーは比較的少ないため、伝熱計算において無視されることが多いです。

しかし、工業炉のような極端な高温環境では、この輻射伝熱の計算を考慮することが不可欠です。

ステファン・ボルツマンの法則の導出

次に、ステファン・ボルツマンの法則の導出について説明します。

多くの方法がありますが、ここではプランクの法則を利用した導出方法を簡単に紹介します。

プランクの法則

プランクの法則は、ある波長 ¥( \lambda \) における放射エネルギー Ebλ を表すもので、次の式で表されます。

Ebλ=C1λ5[exp(C2λT)1]

C1=2πhc02

C2=hc0k

ここで、

  • Ebλ :波長 λ における放射エネルギー [W/m2]
  • C1 :第一放射定数 \([W・μm^4/m^2])
  • C2 :第二放射定数 \([W・μm^4/m^2])
  • h :プランク定数 =6.6256×1034[Js]
  • k :ボルツマン定数 =1.3805×1023[J/K]
  • c0 :真空中の光速 =2.998×108[m/s]

全放射エネルギーの計算

プランクの法則に基づくと、ある波長における放射エネルギーが Ebλ の式で表されます。

この式を波長全域にわたって積分することで、全放射エネルギー Eb が得られます。

Eb=0Ebλdλ=0C1λ5[exp(C2λT)1]dλ

これをさらに整理し、変数変換を行うと、次のような形になります。

Eb=C1T4C240α3exp(α)1dα

上記の積分値は既知の値として、次のように計算されます。

Missing argument for \tag

この結果を用いて、最終的にステファン・ボルツマンの法則が導出されます。

Eb=π415C1C24T4

この式から、ステファン・ボルツマン定数 σ をプランク定数、ボルツマン定数、光速を用いて次のように表せます。

σ=π415C1C245.67×108W/(m2K4)

まとめ

ステファン・ボルツマンの法則は、放射伝熱計算の基礎を成す非常に重要な法則です。

特に高温の環境において、放射エネルギーが温度の 4 乗に比例するため、温度が少し上昇するだけで放射エネルギーは劇的に増加します。

この法則は、プランクの法則を利用して導出することができ、その根底にはプランク定数やボルツマン定数、光速などの基本定数が関与しています。

工業炉などの高温設備では、この法則を適切に理解し、輻射伝熱を考慮した設計が求められます。
ステファン・ボルツマンの法則をしっかりと理解しておきましょう。

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