こんにちは、モアイKOJIです。
皆さんはエアレスタイヤってご存知ですか?名前の通り『空気の入っていない』タイヤで、現在各タイヤメーカーが開発に注力をして実用化を目指している最新テクノロジーです。
[word_balloon id=”2″ size=”L” position=”L” name_position=”hide” radius=”false” balloon=”think” balloon_shadow=”true” font_size=”18″]空気を必要としないからパンクしないことはメリットだけど、他にもメリットはあるのかな?逆に、すぐには実用化できないデメリットや難しさって何だろう?[/word_balloon]
こういった疑問にお答えします。
エアレスタイヤとは
エアレスタイヤとは2010年前後から多くのタイヤメーカーが開発をスタートさせている次世代の新コンセプトタイヤです。
空気を必要とせず、タイヤ表面のトレッド部分とリムが『ブレード』と呼ばれるスポークでつながれていることが特徴です。このブレードはプラスチックのような熱可塑性樹脂が使われています。
このスポークのおかげで、道端の釘などを踏んでもパンクをすることがないというわけです。

ミシュラン アプティス・プロトタイプ
最近では2019年6月、仏タイヤメーカーのミシュラン(Michelin)が米自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)と共同開発して乗用車用の新世代エアアレスタイヤホイールテクノロジー『アプティス・プロトタイプ(Uptis Prototype)』を発表したことが記憶に新しいです。
エアレスタイヤの構造についてはコチラの記事にまとめています。
エアレスタイヤのメリット
エアレスタイヤのメリットは次の5つが考えられます。
- ①パンクしない
- ②スペアタイヤを載せる必要がない
- ③メンテナンスフリー
- ④更生タイヤとして使用できる(リトレッド)
- ⑤燃費がよくなる
- ⑥環境にやさしい
①パンクしない
上述の通り、空気を必要としないエアレスタイヤはパンクをする心配はありません。
パンクしてしまうとタイヤはすぐにペチャンコになって走行不能な状態になってしまいます。特に高速道路走行時に突然パンクしてしまうと、ハンドルをとられて非常に危険です。そのまま走行を続けた場合は最悪、タイヤが粉々に破壊される心配もあります。
運転をする人にとって、パンクをしない安心感は非常に大きなメリットになりますね!
今まではランフラットタイヤと呼ばれる、パンクしても一定距離を一定速度で走行できるタイヤがあり安全性を高めていました。ランフラットタイヤはパンクをしても100kmほど走行でき、ガソリンスタンドやカーディーラーなどのタイヤ修理ができる施設に走行できます。
(タイヤメーカーによって距離や速度は多少異なります)
しかしエアレスタイヤは『パンク』というタイヤの弱点そのものを克服できる、画期的な新技術というわけです。
②スペアタイヤを載せる必要がない
エアレスタイヤはパンクをしないのでスペアタイヤを載せる必要がありません。
スペアタイヤを載せないことのメリットは次の通りです。
- スペアタイヤのスペースを、座席やトランクといった別のスペースに活用できる
- 車両重量が減る
- 重量が減ることで車の燃費や操縦性が向上する
スペアタイヤの重量は約10kgなので、その恩恵はかなり大きいです。
③メンテナンスフリー
空気圧という概念がなくなるので、タイヤの空気圧が減っていないかを日常的にチェックする必要もなくなります。
最低限チェックしなくてはいけないこととしては「スポークにヒビや割れはないか?」「トレッドゴムが欠けていないか?」ぐらいでしょうか。とても簡単ですね!
特にタイヤの空気圧はタイヤ性能に大きく影響し適正内圧から大きく下回ると操縦安定性の低下、偏摩耗の発生、燃費の悪化など様々なデメリットが発生してしまうので、安定した性能が発揮できる恩恵を受けることができます。
タイヤの空気圧が低いことによるデメリットはコチラの記事にまとめています。
~~~現在、執筆中~~~
④更生タイヤとして使用できる(リトレッド)
エアレスタイヤの構造の特徴から、エアレスタイヤは更生タイヤ(リトレッドタイヤ)として使うことができると考えられます。
更生タイヤのメリットは次の通りです。
- 費用が削減できる(リトレッド費用の方が一般的に安い)
- ゴムに用いられる石油資源が68%節約できる
- タイヤ製造・廃棄時におけるCO2排出量が約60%削減できる
ランニングコストが安くなるのは嬉しいですし、脱炭素社会に向けた取り組みにもつながり一石二鳥ですね。
最近では菅首相が2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言したことで話題になりました、この点でも大きな貢献が期待できます。
現在のところリトレッド技術はトラック・バス用の一部のタイヤでしか使われていませんが、エアレスタイヤに用いられることで一般車両のタイヤにも広まっていくのではないでしょうか。
⑤燃費をよくできる
エアレスタイヤにすることでタイヤの転がり抵抗が軽減でき、燃費をよくできるかもしれません。
タイヤの転がり抵抗はタイヤが撓(たわ)んだり、発熱することによって起こるエネルギーロスが原因です。エアレスタイヤではサイド部分がゴムではなくプラスチックのような樹脂なので、これにより発熱が少ないことが期待されます。
また前述の通り、空気圧の変動による偏摩耗の懸念もないのでタイヤと路面の接地状態は常に最適な状態を保つことができ無駄なエネルギーロスの発生を防ぐこともできます。
⑥環境にやさしい
エアレスタイヤはパンクで破棄するタイヤ本数が減る、転がり抵抗を低下できるなど、間違いなく環境にやさしいタイヤと言えます。
ちなみに、ミシュラン(Michelin)の試算では、パンクやメンテナンス不足のために廃棄されるタイヤが減るだけで世界中で年間2億本の廃棄タイヤを削減できるとのこと。
ゴムに代わって樹脂素材が使われるので石油資源の削減やLCA(ライフサイクルアセスメント:Life Cycle Assessment)という観点でもメリットを見出すことができそうです。
エアレスタイヤのデメリット
逆に、エアレスタイヤのデメリットは次の5つが考えられます。
- ①乗り心地が悪い
- ②重い荷物は載せられない
- ③価格が高い
- ④操縦性が悪い(特に高速走行時)
- ⑤お洒落なリムが選べない
①乗り心地が悪い
従来の空気入りタイヤに比べると、エアレスタイヤは乗り心地が損なわれるかもしれません。

ミシュラン アプティス・プロトタイプ
ミシュランの『アプティス・プロトタイプ(Uptis Prototype)』では悪路を乗り越える画像がありましたが、そこではスポーク部分が完全につぶれ切っている状態が見られました。
スポークが硬すぎると地面からの衝撃を和らげることができないため、しなやかさのある熱可塑性樹脂を採用していると考えられます。しかし、大きな段差を乗る超えるなどのタイヤに瞬間的に大きな力が働く状況では、まだ十分に衝撃を吸収しきれてないようです。
瞬間的にパンクしたタイヤになっていると想像すれば分かりやすいかなと思います。
凹凸の少ない平坦路を走る時の乗り心地はスポーク部分が柔らかい方がきっとメリットありますが、突起乗り越しとは背反性能になります。この点が各社の技術力が問われるところになりそうです。
②重い荷物は載せられない
デメリットの①とつながることですが、乗り心地を追及するとスポーク部分を柔らかくしまが、逆に重たい荷物は載せられなくなります。
まだエアレスタイヤのロードインデックスがいくつかは分かっていませんが、従来の空気入りタイヤよりも小さくなるはずです。
③操縦性が悪い(特に高速走行時)
エアレスタイヤはスポークでトレッド部ががっちりと固定されているため、従来のタイヤに比べると『曲がる』という性能は劣ると思います。
ハンドルを切った際にタイヤ全体が撓(たわ)むのではなくトレッド部分のみが捻じられる動きになるため、急なハンドル操作などではタイヤが追従しきれず”スッ”と抜けるような現象が起きるかもしれません。特に高速走行時の操縦性の悪化が心配ですね。
ちなみに、ミシュラン(Michelin)の公式YouTubeチャンネルに『アプティス・プロトタイプ(Uptis Prototype)』で実際に走行している動画がアップされています。
正確な走行速度は分かりませんが時速30~40キロほどでしょうか、緩やかなカーブを走る様子しかまだありませんので、まだ街中や高速道路を走行できるレベルには達してはいないか?と思います。
ミシュラン(Michelin)も2024年に一般市場で発売開始を目指すとプレスリリースで発表していますので、これからどんどん開発を進めて懸念はクリアにされていると期待します。
④お洒落なリムが選べない
エアレスタイヤはタイヤ(スポーク)がリムから外れる/ずれることのないように、スポークとリムが一体型になると考えられます。

リムとタイヤは一体型と思われる
つまり今までのタイヤとは異なりリムとタイヤを自由には選択できないことを意味します。
インチアップなどドレスアップを楽しむ”車好き”にとっては大きなデメリットではないでしょうか。
⑤価格が高い
1本あたりの価格は高くなることが予想されます。
タイヤの交換頻度が減る、あるいは更生タイヤとしてリユースできるなどで長期的に見れば従来の空気入りタイヤと大差はないかもしれません。しかし、タイヤとリムが一体型であることから購入価格はより高額になることは容易に想像できます。
一度にかかる費用が高額になることは消費者の購入意欲を下げてしまう要因になりますので、各タイヤメーカーの営業力が問われることになりそうですね。
また、各メーカーが原材料の低減や製造ラインの最適化など、価格を抑えることにも注力して今後、開発を進めてくれることにも期待したいところです。
各メーカーの開発技術力が問われています
現在のところミシュランが他タイヤメーカーよりも一歩先んじている様子が伺えますが、日本のタイヤメーカーも手をこまねいているわけではありません。
昨年12月、ブリヂストンの先進技術タイヤ開発部長の金子智さんがエアレスタイヤについてインタビューを受けていたコラムがありました。
ブリヂストンでは「パンクしないタイヤを作りたい」というアプローチから、2008年より開発がスタートしました。当初は試行錯誤の連続だったそうですが、まず2020年に向けて、自転車用エアレスタイヤの実用化を目指していると言います。
残念ながら2020年の自転車用エアレスタイヤ実用化には至らなかったようですが、近い将来の実用化に向けて各タイヤメーカーがしのぎを削り開発競争を繰り広げているはず!
どんな未来がやってくるのか楽しみですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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