はじめに
サイクロン集塵機は、粉塵の分離と回収を行う重要な装置です。
設計段階で圧力損失を予測することは、送風機の選定やエネルギーコストの見積もりにおいて非常に重要です。
今回は、OpenFOAMを用いてサイクロン集塵機のシミュレーションを行い、その圧力損失を計算します。なお、今回は粒子挙動の解析は行いません。
サイクロン集塵機の設計
まず、サイクロン集塵機の設計を行います。
設計に必要な基本データとして、処理風量120 m³/min、分離できる粉塵の最小径10µmを使用します。
- サイクロン径の決定:限界粒子径と処理風量を基に、標準型サイクロンの寸法を決定します。サイクロン径Dは約1.3mとなり、全体の高さは約3.9mです。
図1: 標準型サイクロン
FreeCADによる解析モデル作成
次に、FreeCADを使用してサイクロン集塵機のモデルを作成します。
- 上部パーツ(円筒と立方体の組み合わせ)と下部パーツ(円錐と円筒の組み合わせ)を作成します(図2, 図3参照)。
- モデルを面要素に分割し、流入口、流出口、サイクロン内壁をstlファイルとして出力します(図4参照)。
図2: 上部パーツ
図3: 下部パーツ
図4: 面要素に分割
FreeCADの詳細な操作については、こちらの過去の記事を参考にしてください。
XSimでの条件設定
FreeCADで作成したstlファイルを使用し、XSimで解析条件を設定します。
- XSimに接続し、stlファイルをインポート後、スケールをm単位に変更します(図5参照)。
- メッシュ設定はデフォルトで問題ありませんが、サイクロン中心の円筒部分を詳細に解析するため、再分割領域を設定します(図6, 図7参照)。
- 表面レイヤーメッシュをサイクロン内壁に設定し、基本設定、物性設定、初期条件を入力します(図8~図11参照)。
図5: 形状のインポートとスケール変更
図6: 体積メッシュ設定
図7: 再分割領域の設定
図8: 表面レイヤーメッシュの設定
図9: 基本設定
図10: 物性設定
図11: 初期条件設定
次に、境界条件を設定します。
- 流入口の流速は計算した値(-11.8343 m/s)を入力し、流出口は自然流入出、サイクロン内壁は静止壁に設定します(図12参照)。
- 最後に、計算設定と出力設定を行い、解析ファイルをエクスポートします(図13~図15参照)。
図12: 境界条件設定
図13: 計算設定
図14: 出力設定
図15: 解析ファイルの出力
XSimの操作方法の詳細については、こちらの過去の記事を参考にしてください。
OpenFOAMでの計算
エクスポートした解析ファイルを使用して、OpenFOAMで計算を行います。
- ターミナルを起動し、解析ファイルを展開後、
./Allrun
コマンドでメッシュ分割と計算を自動実行します。
OpenFOAMの計算手順については、こちらの過去の記事をご覧ください。
ParaViewでの結果可視化
計算が完了したら、ParaViewを使用して結果を可視化します。
- メッシュ表示を確認し、サイクロンの細かい部分のメッシュが適切に生成されていることを確認します(図16参照)。
- 流速コンター表示と静圧コンター表示で、流れの旋回や圧力分布を確認します(図17, 図18参照)。
図16: メッシュ図
図17: 流線を流速コンターで色分け
図18: 流線を静圧コンターで色分け
ParaViewの操作については、過去の記事を参考にしてください。
まとめ
今回は、サイクロン集塵機のシミュレーションを行い、圧力損失を求めました。XSimでは粒子追跡ができませんが、OpenFOAMのソルバーを使って解析ファイルを修正すれば対応可能です。詳しい操作方法については、過去の記事を参考にしてください。次回はさらに高度な解析を行う予定です。
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