動粘度とは:理論と実用例を詳しく解説

化学工学
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概要

動粘度とは、ある流体の粘度を密度で割った値を指し、次の式で表されます。


$$
\nu = \frac{\mu}{\rho}
$$

ここで、

  • \( \nu \) :動粘度 [m²/s]
  • \( \mu \) :流体の粘度 [Pa・s]
  • \( \rho \) :流体の密度 [kg/m³]

動粘度は、流体力学の計算でよく使用され、特にレイノルズ数などの計算で重要な役割を果たします。

粘度が高いほど動粘度も大きくなるため、粘度と動粘度は類似した意味を持つことが多いですが、流体の密度も関わってくるため、厳密には異なる概念です。

この記事では、粘度と動粘度の違いを解説し、その応用や計算についても詳しく見ていきます。

粘度と動粘度の違い

粘度とは

粘度は、流体が外力を受けた際に生じる内部摩擦による抵抗の大きさを示します。

粘度が大きい流体ほど、流体の層間の摩擦力が強く、流動しにくくなります。

例えば、はちみつのような粘度の高い流体は、水に比べて流動させるのに大きな力が必要です。

粘度の詳細な説明はこちら

動粘度とは

動粘度は、流体の粘度をその密度で割った値で、重力が作用する際の流体の特性を示します。

流体が自重で流れるとき、密度が大きい流体ほど流れやすく、小さいほど流れにくいという性質が現れます。

そのため、動粘度は、粘度に密度の要素を加味した流体固有の抵抗として定義されます。

粘度と動粘度の違い:外力と重力による抵抗

粘度は、外力が加わったときの流体の摩擦抵抗を示します。
流体の層間での摩擦力に打ち勝つためには、粘度が大きいほど大きな外力が必要です。

一方で、動粘度は流体に重力が作用する際の流れのしにくさを示します。
密度が大きいほど重力によって流れやすく、密度が小さいほど流れにくくなります。

このため、重力による流れの抵抗は、粘度に比例し、密度に反比例するため、動粘度として表現するのが都合が良いのです。

粘度と動粘度の値の逆転

粘度と動粘度は、密度の関係から、流体の種類によっては値が逆転する場合があります。

次に、空気と水の粘度と動粘度を比較してみましょう。

流体粘度 [Pa・s]密度 [kg/m³]動粘度 [m²/s]
空気 (@25℃)1.85×10⁻⁵1.181.56×10⁻⁵
水 (@25℃)9.12×10⁻⁴993.969.18×10⁻⁷
空気と水の粘度と動粘度の比較

この表からわかるように、粘度で比較すると水の方が大きいですが、動粘度で比較すると空気の方が大きくなっています。

このように、特に気体と液体の比較では密度差が大きいため、粘度と動粘度の値が逆転することがあります。

粘度・動粘度の使い分け

粘度と動粘度は非常に似た概念ですが、ほとんどの分野では粘度を基に評価することが一般的です。

特に化学工業の水力学計算では、配管設計やポンプ、バルブの選定に粘度がよく使われます。

一方、動粘度が重視される分野も存在します。
例えば、以下のようなケースです。

  • 燃料噴霧と燃焼:重油などの噴霧特性の評価に動粘度が使われます。
  • 薄膜コーティング:均一な薄膜を形成するための指標として動粘度が重要です。
  • 食品業界:ソースやデザートのテクスチャ調整に動粘度が使用されます。
  • 医薬品業界:薬液の流動性や混合度合いの評価に動粘度が関わります。
  • 液体金属の鋳造:金属の流動性や品質制御で動粘度が重要な指標です。

このように、高度な流動制御が必要とされる分野では、動粘度が使用されることがあります。

まとめ

動粘度について解説しました。基本的には、粘度と動粘度はどちらも「流れにくさ」を示す指標であり、動粘度は粘度を密度で割った値として定義されます。

粘度が高い流体ほど、動粘度も大きくなりますが、気体と液体のように密度差が大きい場合には、動粘度の値が逆転することもあります。

化学工業や配管設計では粘度がよく使用されますが、動粘度が重要となる分野も存在し、それぞれの特性を理解して使い分けることが重要です。流体力学の基礎として、粘度と動粘度を押さえておきましょう。

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