ヌセルト数とは

CAE用語
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ヌセルト数

一言で表すと、、

ヌセルト数とは、物体表面における対流による熱伝達と、熱伝導による熱移動のバランスを示す無次元数です。

概要

ヌセルト数(Nusselt number)は、伝熱工学で重要な役割を果たす無次元数で、物体表面から流体へ、あるいは流体から物体表面へ伝わる熱量を評価するために使用されます。名前の由来は、ドイツの工学者ヴィルヘルム・ヌセルトにちなんで名付けられました。

ヌセルト数は、対流伝熱と熱伝導の効果を定量的に比較するための指標であり、流体力学や熱交換器の設計において重要な役割を果たします。

イメージ

ヌセルト数を直感的に理解するために、次のような例を考えてみましょう。

お風呂のお湯が温かく、表面から熱が空気中に放散されていく状況を想像してみてください。このとき、お風呂の表面から空気中への熱の伝わり方は、主に熱伝導対流によって決まります。

ヌセルト数が高い場合:
例えば、風が吹いているとき、風によって空気が速く動き、お湯の表面から熱が効率的に空気中に運ばれます。これがヌセルト数が高い状態を示しており、対流による熱の伝達が非常に効率的であることを意味します。

ヌセルト数が低い場合:
一方、風が吹いていない静かな状態では、熱はお湯の表面から空気中にゆっくりと伝わります。これがヌセルト数が低い状態を示しており、熱は主に熱伝導によってゆっくりと空気中に移動します。

つまり、ヌセルト数が大きいと、対流による熱移動が強く、熱伝導による移動が相対的に小さいことを意味します。

定義

ヌセルト数は次のように定義されます:

$$
Nu = \frac{h \cdot L}{k}
$$

ここで、

  • \( Nu \) : ヌセルト数
  • \( h \) : 対流伝熱係数
  • \( L \) : 代表長さ(通常は対象物の特定の寸法)
  • \( k \) : 流体の熱伝導率

この式は、流体が物体に触れることでどれだけ効率的に熱を運ぶかを表します。ヌセルト数は、シャーウッド数やレイノルズ数といった他の無次元数とも密接に関連しています。

CAEにおける重要性

CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)において、ヌセルト数は熱解析に不可欠な要素です。

特に熱交換器の設計やエレクトロニクス冷却の分野では、ヌセルト数が正確に評価されることで、シミュレーションの精度が向上し、設計の最適化が図れます。

熱伝達が重要な要素となる問題において、ヌセルト数を適切に設定することは、効率的な熱管理を実現するための鍵となります。

物理的意味合い

ヌセルト数は、物理的には熱の移動効率を示しています。

ヌセルト数が高いと、対流が支配的であることを示し、流体が効率よく熱を運ぶことが期待されます。
逆に、ヌセルト数が低いと、熱伝導が支配的であり、熱移動が遅くなることを示します。

この数値は、流体の速度や粘性、温度、流れの状態などの影響を受けます。

まとめ

ヌセルト数は、伝熱工学における対流と熱伝導のバランスを示す重要な無次元数です。流体や物体間での熱移動を正確に理解するためには、ヌセルト数を適切に評価することが不可欠です。特にCAEにおいては、ヌセルト数がシミュレーション結果に与える影響を理解することで、より効率的な設計と最適化が可能となります。

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