SPH法とは

CAE用語
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SPH法(Smoothed Particle Hydrodynamics、スムース粒子流体力学法)

一言で表すと、、

SPH法とは、流体や固体の挙動をシミュレーションするための粒子ベースの数値解析手法です。

概要

SPH法(Smoothed Particle Hydrodynamics、スムース粒子流体力学法)は、1977年に天体物理学の分野で開発された数値解析手法です。この手法は、流体や固体の挙動を粒子でモデル化し、各粒子の動きを追跡することでシミュレーションを行います。

粒子法の一種として、従来の格子ベースの手法に対する柔軟性と精度の高さから、流体力学、構造解析、衝撃解析、自由表面問題など、さまざまな分野で応用されています。

イメージ

SPH法を理解するために、流体の流れを無数の粒子に分解し、各粒子がどのように互いに影響し合いながら動くかを想像してみてください。これらの粒子が互いに「滑らかに」影響を与え合うことで、流体全体の動きを再現します。具体的には、水の中で石を投げ入れたときの波紋の広がりを粒子単位でモデル化するようなイメージです。

定義

SPH法は、物理的な現象をシミュレーションする際に、流体や固体を多数の粒子に分割し、これらの粒子が互いにどのように作用し合うかを計算する手法です。各粒子は物理的な特性(質量、速度、エネルギーなど)を持ち、ナビエ・ストークス方程式などの流体力学の基本方程式を粒子間で適用することにより、時間発展を計算します。

SPH法の重要な特徴として、次の点が挙げられます:

  • 粒子ベースのモデリング:流体や固体を離散的な粒子で表現し、粒子間の相互作用を通じて運動を再現します。
  • カーネル関数:粒子間の影響を滑らかにするためにカーネル関数を使用し、数値計算の精度を向上させます。
  • メッシュレス法:従来の格子を必要としないため、複雑な自由表面や大変形問題にも対応可能です。

CAEにおける重要性

CAE(Computer-Aided Engineering)分野において、SPH法は特に自由表面問題や大変形問題、衝撃解析において強力なツールとして利用されています。例えば、津波や洪水のシミュレーション、船舶の波浪中での挙動解析、自動車の衝突解析など、複雑で非線形な現象の解析が可能です。

従来の格子ベースの手法では、格子の変形や自由表面の扱いが困難である一方、SPH法は粒子ベースであるため、これらの問題を効率的に処理できる点が重要です。さらに、SPH法は多相流や流固連成問題にも適用できるため、設計や開発プロセスにおけるシミュレーションの信頼性を向上させることができます。

物理的意味合い

SPH法の物理的意味合いは、物理現象を粒子レベルで再現する能力にあります。各粒子は流体や固体の一部として物理法則に従い、その運動が他の粒子に影響を与えます。これにより、全体として物理的に整合性のあるシミュレーションが可能となります。

特に、SPH法では圧力や密度の計算が粒子間で滑らかに行われるため、非圧縮性流体のシミュレーションでも高い精度を保つことができます。また、メッシュが不要なため、複雑な幾何形状や動的な境界条件を扱う際にも有利です。

まとめ

SPH法は、粒子ベースで流体や固体の挙動をシミュレーションするための強力な手法であり、特に自由表面問題や大変形問題において有効です。CAE分野での応用範囲は広く、自動車、船舶、土木など多岐にわたります。今後も、SPH法はより複雑な物理現象の解析において重要な役割を果たすことでしょう。

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