翼型に対して一様流れがある場合、翼の下面に正圧、上面に負圧が発生し、その結果として揚力が生じます。流れ方向成分は抗力、垂直方向成分は揚力と呼ばれます。
迎角を大きくすることで、揚力と抗力は共に増大しますが、特定の迎角を超えると揚力が大幅に減少し、抗力が大幅に増加する現象が現れます。これを「失速」と呼びます。
本記事では、NACA0012翼型に対する迎角の変化による流れ場や揚力の変化を確認し、実験結果と比較します。
CFDで比較する式
揚力係数(\( C_L \) )を算出するための式は以下の通りです。
$$
C_L = \frac{L}{\frac{1}{2} \rho V^2 A_p}
$$
ここで、
- \( L \) : 揚力
- \( \rho \) : 流体の密度
- \( V \) : 流速
- \( A_p \) : 翼の最大投影面積
揚力係数が大きいほど、同じ条件でより高い揚力を得ることができます。
解析情報
基本情報
- ソフトウェア : SIEMENS STAR-CCM+
- メッシュ : ポリゴンメッシュ、プリズムレイヤー(2次元モデル)
- セル数 : 約23,000
- 内部フェイス : 約59,000
- 節点 : 約36,000
物理モデル
- 定常解析
- 非圧縮性気体
- 分離型流れ
- 乱流モデル : RANS, k-ω SST モデル
境界条件、初期条件、他
- 境界条件 : 下図のように、左から右へ、NACA0012翼に向かって流速 45 [m/s] の空気が流入
解析結果
迎角が0度のとき
完全に対称な流れが観察されます。翼の上下で圧力差はないため揚力は発生しませんが、前縁にあるよどみ点により抗力が生じます。
迎角が14度のとき
後縁でわずかに逆流領域が確認されます。翼の上下で圧力差が生じるため揚力が発生しますが、それに伴って抗力、揚力係数(\( C_L \) )も増加します。
迎角が18度のとき
逆流領域が上流まで達し、前縁で失速が発生しています。大規模な剥離により上面の負圧が弱まり、(揚力係数(\( C_L \) ))が低下しています。
CL-αカーブと実験値との比較
パラメータスタディによりCL-αカーブを作成し、実験値と比較しました。
迎角14度までは、実験値と良い一致を示しており、低~中迎角では2次元定常解析で十分な精度があります。しかし、迎角14度以降で実験値との差が大きくなり、失速後は特に差が顕著です。
大規模な剥離流れを精度よく解析するためには、3次元の非定常解析(DESあるいはLES)が必要であると考えられます。
参考資料
- NASA/Langley Research Center Turbulence Modeling Resource
2DN00: 2D NACA 0012 Airfoil Validation Case リンク
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