サマリ
ポリヘドラルメッシュやトリムメッシュなどのメッシュタイプと計算時間の関係について解説します。熱流体解析における計算時間の違いを具体的に理解しましょう。
メッシュタイプと計算時間の関係
計算時間が異なる要因
有限体積法による熱流体解析は離散化を採用しています。この方法では、セル重心に計算点を持ち、計算するべき変数の総数がセル数に依存します。そのため、一般的に計算時間はセル数に依存すると言われています。
しかし、同じ計算対象で同程度のセル数で解析を実行しても、ポリヘドラルメッシュやトリムメッシュといったメッシュタイプによって計算時間に違いが生じることがあります。
この現象は、有限体積法の計算の特徴に由来します。有限体積法では、各セルにおける保存量の収支を計算するために、セルフェイスにおける保存量の流束(Flux)が必要です。しかし、有限体積法ではセル重心にしか変数を持たないため、セル重心の変数からセルフェイスにおける流束を算出する必要があります。
この流束算出処理が多いほど、計算量が増加するため、流束計算の処理量がセルフェイスの数に依存する傾向が生まれます。
メッシュタイプによる計算時間の違い
この理由から、同程度のセル数でもメッシュタイプによって計算時間に違いが生じます。基本的に、セルフェイスの数はメッシュタイプに依存します。
大まかにメッシュタイプを分類すると、テトラメッシュ、トリムメッシュ、ポリヘドラルメッシュの順にセルフェイスの数が少なくなります。
その結果、セル数が同程度の場合、テトラメッシュ、トリムメッシュ、ポリヘドラルメッシュの順に計算時間が短くなる傾向があります。
注意点
本記事の内容は、有限体積法ベースの物理モデル、およびメッシュタイプに関わらず収束性が良い計算を対象としています。節点数に依存する有限要素法ベースの物理モデルでは、この記事の内容は該当しません。また、有限要素法ではトリムメッシュやポリヘドラルメッシュは使用できません。
さらに、メッシュタイプによる計算の収束性や安定性に違いが生じる場合、他の要因が寄与してメッシュタイプと計算時間の関係が逆転することもあります。例えば、メッシュタイプによって計算の安定性が大きく異なる場合、AMG線形ソルバーのサイクル数が「ポリヘドラルメッシュ < トリムメッシュ」となることで、同程度のセル数でも計算時間が「ポリヘドラルメッシュ < トリムメッシュ」となることがあります。
円管流路の解析事例
円管流路の手前から1.0 m/sで流入させ、0.0 Paの圧力境界から流出させる計算を行いました。物理モデルとしては、分離型流れ、密度一定、Realizable K-ε2層モデルを選択しています。
(工事中)
下図のように均等なメッシュ生成が行われており、同程度のセル数であれば、テトラメッシュ、トリムメッシュ、ポリヘドラルメッシュの順にセルフェイス(内部フェイス)の数が少ないことを確認しています。
(工事中)
最後に、横軸がセル数、縦軸が計算時間のプロットを示します。すべてのケースは同一のマシンで、4並列で計算しました。テトラメッシュ、トリムメッシュ、ポリヘドラルメッシュの順に計算時間が短い傾向が確認できます。
(工事中)
まとめ
メッシュタイプと計算時間の関係は、有限体積法ベースの解析において非常に重要な要素です。同じセル数でも、ポリヘドラルメッシュ、トリムメッシュ、テトラメッシュの順にセルフェイスの数が減少し、それに伴い計算時間も短縮される傾向があります。
ただし、計算の安定性や収束性に違いがある場合、この関係が逆転する可能性もあるため、メッシュタイプの選定は慎重に行う必要があります。特に、精度と計算時間のバランスを考慮したメッシュ選定が求められます。本記事の内容を参考に、最適なメッシュタイプを選び、効率的な解析を実現してください。
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