サマリ
シミュレーションの時間ステップサイズは、非定常的な物理現象を正確に表現するために、十分な時間分解能が得られるかどうかで判断されます。この記事では、シミュレーションの精度を高めるために必要な時間ステップサイズの設定方法を解説します。
非定常解析の時間ステップサイズの最適な設定方法とは
時間ステップサイズの決定基準
シミュレーションにおける時間ステップサイズは、非定常的な物理現象を正確に表現するために重要な要素です。適切な時間分解能を確保することで、非定常流れの時間効果を正確に捉えることができます。ただし、時間ステップサイズを決定するガイドラインはあくまで指針であり、解析精度が時間分解能にどのように依存するかを検証した上で、最終的な時間ステップサイズを決める必要があります。
例. 物体周囲の流体解析
物体周囲を流れる一般的な流体の場合、時間ステップサイズは対流の時間スケールを基準に決定します。例えば、物体の長さが \( L \) で、移動速度が \( U \) の場合、この物体固有の時間スケールは \( T = \frac{L}{U} \) で表されます。
この値を1/10や1/20の分解能にすると、時間ステップサイズは \( \Delta t = 0.1 T \) または \( \Delta t = 0.05 T \) となります。
例. 特定周期を持つ現象の解析
特定の周期を持つ現象が重要な場合、時間ステップサイズはサンプリングレートに近い値を設定します。最低限、周期 \( T \) を10から20分割する程度の時間刻みが必要です。これにより、現象を精度よく再現することが可能になります。
例. 自由表面流の解析とCFL条件
自由表面流を正確に解析するためには、HRIC(High Resolution Interface Capturing)スキームを使用し、適切なクーラン数(CFL条件)を維持することが重要です。CFL数は次のように定義されます。
$$
\text{CFL} = \frac{U \cdot \Delta t}{\Delta x}
$$
ここで、\( \Delta x \) はメッシュの間隔を表します。
自由表面流の解析では、メッシュ間隔に基づいて時間ステップサイズを決定することが推奨されます。デフォルトでは、HRICは自由表面に合わせて最適化されており、CFL数は0.5未満に設定されます。ただし、時間ステップサイズを大きくすると、粗いメッシュでも計算は可能ですが、現象に対する解像度が不十分になる可能性があります。
まとめ
シミュレーションにおける時間ステップサイズの設定は、解析の精度を左右する重要な要素です。物体周囲の流体、特定周期の現象、自由表面流など、各現象に応じて適切な時間ステップサイズを設定することで、精度の高い解析を実現できます。競合する要因を考慮しながら、最適な時間ステップサイズを見つけることが、信頼性の高いシミュレーション結果を得るための鍵となります。
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