亀井・平岡の式とは:小型翼への応用を詳細解説

CAE用語
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亀井・平岡の式

一言で表すと、、

亀井・平岡の式は、撹拌動力を計算するための経験的な式であり、特に邪魔板(バッフル)なしでのパドル翼や傾斜パドル翼に適用できます。

翼の形状や角度、撹拌条件に応じて幅広く利用され、効率的な動力計算が可能です。

概要

撹拌プロセスにおいて、動力の計算は撹拌効率やエネルギー消費に直接影響します。

亀井・平岡の式は、撹拌翼の形状や回転速度、液体の粘度や密度などの要因を考慮した経験的な式であり、様々な撹拌装置に適用可能です。

特に小型のパドル翼や傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼に対応しています。

この式は、撹拌条件を設定する際に必要な動力を予測し、撹拌効率を高めるための指針を提供します。
また、撹拌装置の設計や最適化においても有用です。

イメージ

撹拌装置を想像すると、液体内で固体や液体を均一に混ぜるために、適切な撹拌速度と動力が必要です。
亀井・平岡の式は、この撹拌に必要なエネルギーを計算するためのツールとして使われます。

例えば、小型のパドル翼や傾斜パドル翼では、撹拌条件に応じて翼の角度や回転速度を調整し、効率的な撹拌を実現します。

亀井・平岡の式は、これらの条件を考慮し、最適な動力を提供するために使われます。

定義

まずは基本式含め、小型翼への利用について紹介します。

亀井・平岡の式は以下のように定義されます。

パドル翼、傾斜パドル翼の基本式

亀井・平岡の式はバッフル(邪魔板)を取り付けていないパドル翼に対して導き出されました。

$$
N_{p0} = \frac{1.2 \pi^4 \beta^2}{8d^3/ \left( D^2 H \right)} f
$$

$$
f = \frac{C_L}{Re_G} + C_t \left( \left( \frac{C_{tr}}{Re_G} + Re_G \right)^{-1} + \left( \frac{f_~}{C_t} \right)^{1/m} \right)^m
$$

$$
Re_d = \frac{n d^2 \rho}{\mu}
$$

$$
Re_G = \frac{\pi \eta \ln \left( D/d \right)}{4d/ \beta D} Re_d
$$

$$
C_L = 0.215 \eta n_d \frac{d}{H} \left( 1 – \left( \frac{d}{D} \right)^2 \right) + 1.83 \frac{b \sin \theta}{H} \left( \frac{n_p}{2 \sin \theta} \right)^{1/3}
$$

$$
C_t = \left( \left( 1.96 X^{1.19} \right)^{-7.8} + (0.25)^{-7.8} \right)^{1/7.8}
$$

$$
m = \left( \left( 0.71 X^{0.373} \right)^{-7.8} + (0.333)^{-7.8} \right)^{1/7.8}
$$

$$
C_{tr} = 23.8 \left( \frac{d}{D} \right)^{-3.24} \left( \frac{b \sin \theta}{D} \right)^{-1.18} X^{-0.74}
$$

$$
f_~ = 0.0151 \left( \frac{d}{D} \right) C_t^{0.308}
$$

$$
X = \gamma n_p^{0.7} b \left(\sin \frac{\theta}{H}\right)^{1.6}
$$

$$
\beta = 2 \ln \left[ \frac{\left( D/d \right)}{\left( D/d \right) – \left( d/D \right)} \right]
$$

$$
\gamma = \left( \frac{\eta \ln \left( D/d \right)}{\left( \beta D/d^5 \right)} \right)^{1/3}
$$

$$
\eta = 0.711\frac{0.157 + n_p \ln \left( D/d \right)^{0.611}}{n_p^{0.52} \left[1 – \left( d/D \right)^2 \right]}
$$

ここで、

  • \( N_{p0} \) : 邪魔板なしの動力数(無次元)
  • \( d \) : 撹拌翼の直径(m)
  • \( D \) : 撹拌槽の直径(m)
  • \( H \) : 液深さ(m)
  • \( \rho \) : 密度(kg/m3
  • \( \mu \) : 粘度(Pa・s)
  • \( n \) : 回転数(1/s)
  • \( \mu \) : 粘度(Pa・s)
  • \( n_p \) : 羽根枚数(無次元)
  • \( \theta \) : 羽根取付け角度(deg)
  • \( b \) : 翼幅(m)

この基本式に翼角度 \( \theta \) を代入することで、傾斜パドル翼にも対応可能です。

タービン翼

亀井・平岡の式は、タービン翼においてもそのまま利用できます。

特別な変更を加える必要がなく、効率的な動力計算が可能です。

プロペラ翼、三枚後退翼の変数

プロペラ翼や三枚後退翼の場合、亀井・平岡の式に対して以下のような変数を変更して使用します。

$$
C_t = \left( (3X^{1.5})^{-7.8} + (0.25)^{-7.8} \right)^{-1/7.8}
$$

$$
m = \left( (0.8X^{0.373})^{-7.8} + (0.333)^{-7.8} \right)^{-1/7.8}
$$

この式を用いて、プロペラ翼や三枚後退翼の動力計算が可能です。

スーパーミックスHR320, HR320Sの変数

スーパーミックスシリーズは、佐竹マルチミクスの商品名であり、特に撹拌効率を高めるために設計された撹拌翼です。

HR320HR320Sは、傾斜パドル翼の改良版であり、亀井・平岡の式に対して一部変数を変更することで利用可能です。

  • スーパーミックスHR320の式

$$
C_{t} = \left( (36.7X^{1.73})^{-7.8} + (0.25)^{-7.8} \right)^{-1/7.8}
$$

  • スーパーミックスHR320Sの式

$$
b’ = 1.74b
$$

$$
C_L = 0.215 \eta n_{p} \frac{d}{H} \left(1 – \left(\frac{d}{D}\right)^2\right) + 1.83 \frac{b’ \sin\theta}{H} \left(\frac{n_p}{2\sin\theta}\right)^{1/3}
$$

$$
C_t = \left( \left( 25X^{1.73} \right)^{-7.8} + (0.25)^{-7.8} \right)^{-1/7.8}
$$

$$
m = \left( \left( 1.01X^{0.373} \right)^{-7.8} + (0.333)^{-7.8} \right)^{-1/7.8}
$$

$$
C_{tr} = 0.2 \left( \frac{d}{D} \right)^{-3.24} \left( \frac{b’ \sin \theta}{D} \right)^{-1.18} X^{-0.74}
$$

ここで、

  • \( b \) : 翼幅(m)
  • \( n_p \) : 羽根枚数(無次元)
  • \( d \) : 撹拌翼の直径(m)
  • \( D \) : 撹拌槽の直径(m)
  • \( H \) : 液深さ(m)
  • \( \theta \) : 羽根取付け角度(deg)

これらの式により、スーパーミックスシリーズの撹拌性能を正確に評価できます。

CAEにおける重要性

CAE解析では、亀井・平岡の式を基にした撹拌プロセスのシミュレーションが重要です。
撹拌装置内での流体の動きを解析し、動力計算を行う際、CFD(数値流体力学)解析を使って、最適な撹拌条件を検証できます。

特に、様々な翼タイプや条件に応じて変数を変更できる亀井・平岡の式は、CAEにおいて撹拌プロセスを効率化するための重要なツールです。

CAE解析により、撹拌翼の形状や角度、速度をリアルタイムでシミュレーションし、最適化を図ることができます。

物理的意味合い

亀井・平岡の式には、以下のような物理的な意味合いがあります。

  1. 動力数と流体特性の関係: 動力数(Np)は、流体の粘度や密度、撹拌速度などに依存します。亀井・平岡の式は、これらの要素を包括的に考慮し、撹拌効率を最適化するための動力計算を提供します。
  2. 小型翼への応用: パドル翼や傾斜パドル翼、プロペラ翼、タービン翼など、多様な撹拌翼に適用でき、装置の設計と動力計算の柔軟性が高まります。
  3. 翼角度の影響: 傾斜パドル翼の場合、角度θを変更することで撹拌効率を調整できます。これにより、撹拌翼の設計において最適な配置が実現します。

まとめ

亀井・平岡の式は、撹拌動力計算における重要な理論であり、小型の撹拌翼やタービン翼、プロペラ翼にも適用可能です。特に、翼の形状や角度、回転速度に応じた柔軟な動力計算ができるため、効率的な撹拌プロセス設計が可能です。

また、CAEやCFD解析との併用により、撹拌装置の設計段階でシミュレーションを行い、最適な動力計算を実現できます。
亀井・平岡の式を理解し、正しく応用することで、エネルギー消費の削減やプロセスの改善が期待できます。

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