亀井・平岡の式とは:大型翼や円筒以外のタンク形状への展開

CAE用語

亀井・平岡の式は、流体力学の分野で重要な役割を果たす式であり、特にタンク内の流体の挙動を予測する際に用いられます。

この記事では、亀井・平岡の式の基本的な概念を説明し、その応用を大型翼や円筒形状以外のタンク形状にどのように展開できるかについて考察します。

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亀井・平岡の式の基本概念

亀井・平岡の式は、流体の密度、粘度、タンクの形状や寸法を考慮して、圧力損失や流量を計算します。
この式は、特定のタンク形状における流体の挙動を数式で表現するため、タンクの設計や運用に役立ちます。

亀井・平岡の式の詳細な説明はこちら

大型翼への利用

亀井・平岡の式は、小型翼であるパドル翼を基に作られましたが、大型翼にも利用できます。
以下に、大型翼への適用方法を示します。

アンカー翼

アンカー翼に対しては、亀井・平岡の式を変更せずそのまま利用できます。

Np0=1.2×π4β28d3/(D2/H)f

f=CLReG+Ct((CtrReG+ReG)1+(fCt)1/m)m

Red=nd2ρμ,ReG=πηln(D/d)4d/βDRed

CL=0.215ηnddH(1(dD)2)+1.83bsinθH(np2sinθ)1/3

Ct=((1.96X1.19)7.8+(0.25)7.8)1/7.8

m=((0.71X0.373)7.8+(0.333)7.8)1/7.8

Ctr=23.8(dD)3.24(bsinθD)1.18X0.74

f=0.0151(dD)Ct0.308

X=γnp0.7(sinθH)1.6,β=2ln(D/dD/dd/D)

γ=(ηln(D/d)βD/b)1/3

η=0.7110.157+npln(D/h)0.611np0.52[1(d/D)]2

ここで、

  • Np0 : 邪魔板なしの動力数(無次元)
  • d : 撹拌翼の直径(m)
  • D : 撹拌槽の直径(m)
  • H : 液深さ(m)
  • ρ : 密度(kg/m3
  • μ : 粘度(Pa・s)
  • n : 回転数(1/s)
  • μ : 粘度(Pa・s)
  • np : 羽根枚数(無次元)
  • θ : 羽根取付け角度(deg)
  • b : 翼幅(m)

アンカー翼は非常に太く厚みのあるパドル翼として扱われ、翼径 d や翼幅 b を設定して計算を行います。

参考資料:Correlation of Power Consumption for Several Kinds of Mixing Impellers(International Journal of Chemical Engineering Volume 2012, Article ID 106496, 6 pages)

ヘリカルリボン翼

ヘリカルリボン翼の場合、一部の変数を変更することで亀井・平岡の式を利用できます。

以下の式は、ヘリカルリボン翼に対する亀井・平岡の式です。

Np0=16.0f

f=CLReG+Ct((CtrReG+ReG)1+(fCt)1/m)m

Red=nd2ρμ

ReG=0.0388Red

CL=1.00

Ct=0.100

m=0.333

Ctr=2500

f=0.00683

β=0.538

η=0.538

参考資料:Correlation of Power Consumption for Several Kinds of Mixing Impellers(International Journal of Chemical Engineering Volume 2012, Article ID 106496, 6 pages)

マックスブレンド、スーパーミックスMR205、フルゾーン

亀井・平岡の式は、メーカー各社が提供する大型オリジナル翼にも転用できます。
以下に、各社の式を示します。

  • マックスブレンド(住友重機械プロセス機器)
  • スーパーミックスMR205(佐竹マルチミクス)
  • フルゾーン(神鋼環境ソリューション)

各製品では、タンクの底形状や使用する撹拌翼により、変数 Ct​ の値が変化します。

具体的には、以下の式が使用されます。

マックスブレンドおよびスーパーミックスMR205:皿底槽

Np0=1.2π4β28d3/(D2H)f

f=CLReG+Ct((CtrReG+ReG)1+(fCt)1/m)m

Red=nd2ρμ

ReG=πηln(D/d)4d/βDRed

CL=0.215ηnpdH(1(dD)2)+1.83bH(np2)1/3

Ct=((0.27X0.4)7.8+(0.25)7.8)1/7.8

m=0.333

Ctr=1000(dD)3.24(bD)1.18X0.74

f=0.0151(dD)Ct0.308

X=γnp0.7bH

β=2ln[(D/d)(D/d)(d/D)]

γ=(ηln(D/d)(βD/d5))13

η=0.711(0.157+npln(D/d)0.611np0.52[1(d/D)2])

ここで、

  • Np0 : 邪魔板なしの動力数(無次元)
  • d : 撹拌翼の直径(m)
  • D : 撹拌槽の直径(m)
  • H : 液深さ(m)
  • ρ : 密度(kg/m3
  • μ : 粘度(Pa・s)
  • n : 回転数(1/s)
  • μ : 粘度(Pa・s)
  • np : 羽根枚数(無次元)
  • θ : 羽根取付け角度(deg)
  • b : 翼幅(m)
マックスブレンドおよびスーパーミックスMR205:平底槽

Ct=((0.3X0.4)7.8+(0.25)7.8)1/7.8

フルゾーンの変数:皿底槽

Ct=((0.22X0.4)7.8+(0.25)7.8)1/7.8

フルゾーンの変数:平底槽

Ct=((0.3X0.5)7.8+(0.25)7.8)1/7.8

参考資料:大型翼の撹拌所要動力に対する液高さの影響(化学工学論文集 2016 年 42 巻 6 号 p. 187-191)

翼の板厚も考慮する場合(傾斜パドル翼)

傾斜パドル翼の場合、翼の板厚を考慮する必要があります。

板厚を考慮する場合は、翼幅の項 bsinθ見かけの翼幅 bsinθ+δcosθ に変更して使用します。

ここで、

  • θ : 羽根取付け角度(deg)
  • b : 翼幅(m)
  • δ :翼の板厚(m)

板厚が増すほど、層流域では動力数が増加し、乱流域では動力数が減少する傾向があります。

ただし、通常のパドル翼ではこの方法は適用できません。

円筒以外のタンク形状の場合

亀井・平岡の式は、主に円筒状のタンクで実験されましたが、他の形状のタンクでも利用できます。

以下に、球状タンクの場合のアプローチを示します。

球状タンク

タンク形状が円筒状ではなく球状の場合、見かけの円筒槽直径 Da​ を用いて計算することができます。

見かけの円筒槽直径は以下の式で求められます。

Da=0.874Ds

ここで、

  • Da :見かけの円筒槽直径(m)
  • Ds :球形槽直径(m)

参考資料:球形槽および円筒槽におけるパドル翼の撹拌所要動力の相関(化学工学論文集 1995 年 21 巻 1 号 p. 41-48)

まとめ

亀井・平岡の式は、タンクの形状に応じた流体力学的解析に役立つ強力なツールです。

大型翼や円筒形状以外のタンク形状に展開する際も、適切な変数設定や補正を行うことで、精度の高い計算が可能です。

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