概要
層流の配管内を流れる流体における圧力損失と流速の関係を表す式として、ハーゲン・ポアズイユの式があります。
これは以下のように表されます。
$$
\Delta p = \frac{32 \mu L \bar{u}}{d^2}
$$
ここで、
- \( \Delta p \) :圧力損失 [Pa]
- \( \mu \) :流体粘度 [Pa・s]
- \( L \) :配管長 [m]
- \( \bar{u} \):断面平均流速 [m/s]
- \( d \) :配管直径 [m]
この式は流体力学において基礎的なものであり、特に層流状態の配管流れに適用されます。
大学の試験や各種技術資格でも頻繁に出題される内容です。
本記事では、ハーゲン・ポアズイユの式がどのように導出されるかを、数式と共に解説します。
ハーゲン・ポアズイユの式の導出
まず、配管内の層流における流体の動きを考えます。
配管内の微小な円筒領域に着目し、力の釣り合いを考えます。
力の釣り合いの式
- 流入面に作用する圧力は、次のように表されます。
$$
p \cdot \pi r^2
$$ - 流出面に作用する圧力は、次のように表されます。
$$
(p + \frac{dp}{dx}dx) \cdot \pi r^2
$$ - 円筒側面に作用するせん断応力は以下の通りです。
$$
\tau \cdot 2 \pi r dx
$$
これら3つの力は、定常流において釣り合っています。
そのため、以下の式が成り立ちます。
$$
p \cdot \pi r^2 – \left( p + \frac{dp}{dx}dx \right) \cdot \pi r^2 – \tau \cdot 2 \pi r dx = 0 \tag{2}
$$
せん断応力と速度勾配
定常流の釣り合いの式を整理すると、以下のようになります。
$$
\tau = – \frac{dp}{dx} \cdot \frac{r}{2}
$$
ここで、ニュートンの粘性法則により、次の関係式が成り立ちます。
$$
\tau = – \mu \frac{du}{dr}
$$
一つ目の式に二つ目の式を代入すると、
$$
-\frac{dp}{dx} \cdot \frac{r}{2} = – \mu \frac{du}{dr}
$$
これを整理すると、
$$
\frac{du}{dr} = \frac{dp}{dx} \cdot \frac{r}{2\mu}
$$
上式を積分して流速分布を求めます。
壁面では流速 (u = 0)、中心付近では流速 \( u \) とすると、
$$
u = \frac{R^2}{4\mu} \left( -\frac{dp}{dx} \right) \left( 1 – \frac{r^2}{R^2} \right)
$$
この式が、層流の配管流れにおける流速分布を示しています。
最大流速 \( u_{\text{max}} \)
配管中心における最大流速 \( u_{\text{max}} \) は、\( r = 0 \) のときの流速です。
したがって、層流の配管流れにおける流速分布の式において \( r = 0 \) を代入すると、次のように表されます。
$$
u_{\text{max}} = \frac{R^2}{4\mu} \left( -\frac{dp}{dx} \right)
$$
体積流量 \( Q \) の計算
次に、配管内を流れる流体の体積流量 \( Q \) を求めます。
体積流量は、流速 \( u \) を配管断面全体にわたって積分することで計算されます。
$$
Q = \int_0^R u \cdot 2\pi r dr
$$
これに層流の配管流れにおける流速分布の式を代入し、積分すると、
$$
Q = \frac{\pi R^4}{8 \mu} \left( -\frac{dp}{dx} \right)
$$
体積流量 \( Q \) を配管の断面積で割ると、断面平均流速 \( \bar{u} \) が求められます。
$$
\bar{u} = \frac{Q}{\pi R^2} = \frac{R^2}{8\mu} \left( -\frac{dp}{dx} \right)
$$
最大流速との関係
最大流速 \( u_{\text{max}} \) と断面平均流速 \( \bar{u} \) を比較すると、次のような関係が成り立ちます。
$$
\bar{u} = \frac{1}{2} u_{\text{max}}
$$
これは、層流の配管流れにおいて断面平均流速が最大流速の半分であることを示しています。
圧力損失とハーゲン・ポアズイユの式
圧力勾配について、配管長 \( L \) の区間で圧力損失 \( \Delta p \) がかかる場合、次の式が成り立ちます。
$$
-\frac{dp}{dx} = \frac{\Delta p}{L} \tag{11}
$$
これを断面平均流速 \( \bar{u} \) の式に代入すると、
$$
\bar{u} = \frac{R^2 \Delta p}{8 \mu L}
$$
ここで、配管の半径 \( R \) を直径 \( d \) に置き換えると \( R = \frac{d}{2} \) となるため、次のように変形できます。
$$
\Delta p = \frac{32 \mu L \bar{u}}{d^2}
$$
これが、冒頭で示したハーゲン・ポアズイユの式です。
おわりに
本記事では、層流の配管流れにおけるハーゲン・ポアズイユの式を詳細に導出しました。
導出過程を理解することで、式の意味や背景を深く理解でき、暗記も容易になります。
ぜひ一度、自分で導出してみることをお勧めします。
ハーゲン・ポアズイユの式は、実際の流体力学においても応用されるため、理論をしっかり理解しておくことが重要です。
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