真空度を考慮した流体力学解析の重要性

解析Tips
スポンサーリンク

サマリー

真空度を考慮することで、真空状態の解析が可能です。

詳細

真空度を考慮すれば、真空状態を流体力学で解析することが可能です。一般的に、CFDツール(例:STAR-CCM+)では流体を連続体として扱いますが、連続体近似が成立しない完全な真空は、もはや流体として扱えません。

このような場合に真空の度合いを表す無次元数として「クヌーセン数(Kn数)」が使用されます。

クヌーセン数(Kn数)の定義

クヌーセン数は以下のように定義されます。

$$
\mathrm{Kn} = \frac{\lambda}{L} = \frac{K_b ​T}{\sqrt{2} \pi \sigma^{2} P L}
$$

Kn=Lλ​=Kb​T​/(2​πσ^2PL)^1/2

  • \( T \) : 温度 [K]
  • \( K_b \) : ボルツマン定数 [JK^-1] (1.380×10^-23)
  • \( P \) : 全圧 [Pa]
  • \( \sigma \) : 分子直径 [m]
  • \( L \) : 代表長さ [m]
  • \( \lambda \) : 平均自由行程

これらの値は、通常は材料の物性値として与えられますが、便覧などからも参照可能です。これらの値を用いてクヌーセン数を算出し、以下のように流れの分類を行います。

  • \( \mathrm{Kn} < 0.01 \) : 連続体流れ
  • \( 0.01 < \mathrm{Kn} < 0.1 \) : スリップ流れ
  • \( 0.1 < \mathrm{Kn} < 3 \) : 遷移流れ
  • \( \mathrm{Kn} > 3 \) : 自由分子流れ

STAR-CCM+では、連続体流れとスリップ流れが解析対象となりますが、遷移流れや自由分子流れの条件下での解析は推奨されていません。

具体例:連続体流れの適用限界

例えば、空気を窒素(\( \sigma \) =0.37 [nm])と仮定し、温度を300 [K]と設定した場合、クヌーセン数 \( \mathrm{Kn} \) の定義式は以下のようになります。

$$
\mathrm{Kn} = \frac{6.81×10^{-3}}{P \cdot L}
$$

では、この式を使って、直径10 [mm]の管にこの気体を流した際の連続体流れの適用限界となる圧力を見積もります。まず、式を圧力 \( P \) について整理します。

$$
P = \frac{6.81×10^{-3}}{\mathrm{Kn} \cdot L} [Pa]
$$

直径10 [mm]の管の場合、代表長さ \( L \) を0.01 [m]とすると、式は以下のようになります。

$$
P = \frac{6.81×10^{-1}}{\mathrm{Kn}} [Pa]
$$

ここで、連続体流れの上限である \( \mathrm{Kn} < 0.01 \) を代入すると、

$$
P > 68.1 [Pa]
$$

したがって、この気体の場合、中真空程度が連続体力学の適用限界であると判断できます。

まとめ

クヌーセン数を利用することで、真空度が流体力学に与える影響を考慮し、適切な解析条件を設定することが可能です。特にSTAR-CCM+のようなCFDツールを使用する際には、連続体流れやスリップ流れの範囲内での解析が推奨されます。

コメント