サマリ
非定常解析を行う際に重要な概念であるクーラン数とCFL条件について解説します。
過渡現象を精度よく捉えるためには、クーラン数を1以下に設定することが推奨されます。
この記事では、クーラン数とCFL条件の定義や、適切な時間ステップサイズの設定方法について詳しく説明します。
非定常解析におけるクーラン数とCFL条件の重要性とは
クーラン数とCFL条件の基本
非定常解析において精度の高い解析を実現するためには、メッシュ解像度だけでなく、時間ステップサイズの適切な設定が不可欠です。
Simcenter STAR-CCM+で時間ステップサイズを評価する際には、フィールド関数「Convective Courant Number」(対流のクーラン数)を使用するのが一般的です。
この関数を使うことで、全領域のクーラン数分布を確認することができます。
クーラン数の定義
クーラン数(\( C \) )は次の式で定義されます。
$$
C = \frac{U \cdot \Delta t}{\Delta x}
$$
ここで、
- \( U \) :速度
- \( \Delta t \) :時間ステップのサイズ
- \( \Delta x \) :セルサイズ
クーラン数は、1時間ステップでの流体移動量とメッシュサイズの比率を示します。
非定常解析では、このクーラン数を全領域および全解析時間で1以下に抑えることが重要です。
この条件はCourant-Friedrichs-Lewyにちなんで、CFL条件と呼ばれています。
クーラン数の影響と時間ステップの選び方
クーラン数が1以下の場合、注目セルの情報は隣接セルにのみ伝達されます。
しかし、クーラン数が1以上になると、情報が複数のセルに分散され、適切な時間発展ができなくなります。
これが時間ステップ起因の数値拡散の原因となる可能性があります。
クーラン数とVOF法
Simcenter STAR-CCM+のVOF法(Volume of Fluid)では、クーラン数が0.5以下で最適化されています。
自由表面を伴う解析では、最大クーラン数0.5を目安に時間ステップサイズを設定することが推奨されます。
ただし、準定常状態が仮定できる非定常解析では、CFL条件に拘らずとも解析目的を達成することが可能な場合もあります。
解析精度を高めるためのアプローチ
解析の種類に応じて、クーラン数の推奨値を守ることが求められますが、実際にはすべての領域でCFL条件を完全に満たす必要はありません。
特に、圧力波の空間伝播やVOF波の解析では、クーラン数の設定が難しい場合もあります。
これらの解析では、波の伝播速度を代表速度とするクーラン数で評価を行うと、適切な時間発展を得られることがあります。
アダプティブ時間ステップモデルの活用
STAR-CCM+には、解析精度を高めるための機能としてアダプティブ時間ステップモデルが用意されています。
このモデルを使用すると、クーラン数やフォンノイマン数に基づいて、解析条件に応じた時間ステップを自動的に設定することが可能です。
アダプティブ時間ステップの設定方法はバージョンによって異なる場合があるため、ご使用のバージョンに合わせてユーザーガイドを参照してください。
まとめ
非定常解析におけるクーラン数とCFL条件の適切な管理は、解析の精度に直結します。
特に、時間ステップサイズの選定は非常に重要であり、クーラン数を1以下に保つことが推奨されます。
VOF法などの特殊な解析では、クーラン数の設定が異なる場合もありますが、基本的な原則を理解することで、より正確なシミュレーションを実現できます。
解析目的に応じて、適切な設定を行い、信頼性の高い結果を得ることを目指しましょう。
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