サージングの発生条件と防止法について

化学工学
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概要

遠心ポンプや圧縮機の運転中に、周期的な圧力変動が発生し、吸込み側・吐出し側の配管で振動や騒音が生じる現象を「サージング」といいます。

この現象はポンプや圧縮機の異常運転現象の一つとして広く知られており、特に吐出圧が高く、動力の大きいポンプや圧縮機においては、サージングが発生した際の変動が激しく、非常に危険な運転状況になります。

したがって、プラントの安全かつ安定した運転を実現するためには、サージングを回避することが非常に重要です。

この記事では、サージングの発生条件とその防止法について詳しく解説します。

サージングの発生条件

サージングは、特定の条件が同時に揃ったときに発生する可能性があります。

ここではポンプのサージングを例に、その発生条件について説明します。

H-Q曲線が山形特性であること

ポンプのH-Q曲線(揚程-流量特性曲線)が右上がり勾配を持つ山形の曲線となっていることが、サージング発生の要因の一つです。

通常の右下がり勾配領域では、吐出量が減少するにつれて揚程が増加し、圧力バランスが取れるため、安定した運転が可能です。

しかし、右上がり勾配領域では吐出量が減少すると揚程も同時に減少し、急激な圧力変動が起こるため、運転が不安定になります。
このような運転条件下では、サージングが発生するリスクが高まります。

配管途中に気相溜まりや貯槽が存在すること

吐出し側の配管の途中に気相が溜まるスペースがある場合、これもサージング発生の要因となります。

例えば、配管中にガスが溜まる箇所や、貯槽の気相部分が該当します。

こうした気相溜まりがあることで、流体の流れが不安定になり、圧力変動が発生しやすくなります。

気相溜まりの下流側で流量調整を行っていること

気相溜まりの下流側に設置された弁で流量を調整している場合、サージングが発生しやすくなります。

下流側での流量調整は、配管内の圧力バランスを崩しやすく、気相部での圧力変動が増幅されるため、不安定な運転状態を引き起こす可能性があります。

サージングの防止法

サージングを防止するためには、前述した発生条件を避けることが重要です。

具体的には、以下の対策が効果的です。

H-Q曲線に右上がり勾配のないポンプを採用する

サージングを防ぐための最も確実な方法は、H-Q曲線に右上がり勾配がないポンプを採用することです。

こうしたポンプは、吐出量が減少しても揚程が増加し、圧力バランスが取りやすくなるため、安定した運転が可能になります。

また、既設のポンプにおいては、羽根車の形状を加工して右上がり勾配の少ない特性に変更することも有効な対策です。

H-Q曲線の右下がり特性部分で運転する

ポンプのH-Q曲線に右上がり特性がある場合でも、右下がり特性の運転領域で運転することでサージングを回避できます。

とはいえ、プロセスの要求性能によっては流量の調整が難しい場合もあるでしょう。

そのような場合には、吐出し配管にバイパス配管を設けて、余分な吐出量を貯槽などに戻すことで、主流の流量を維持しつつポンプの吐出量を増加させ、安定した運転を確保する方法があります。

配管中の気相溜まりを取り除く

配管中に気相溜まりが存在する場合、流量を調整することで気相を取り除くことが有効です。

また、配管を若干の上り勾配で敷設することで、自然に気体が抜けるように設計することも効果的です。

気相溜まりより上流側の弁で流量調整を行う

気相溜まりのある配管や貯槽よりも上流側の弁で流量を調整することで、気相部の変動が起きにくくなり、サージングの発生を防ぐことができます。

これにより、圧力の安定化が図られ、運転がスムーズに進行します。

まとめ

サージングは以下の3つの条件が同時に揃ったときに発生します。

  1. H-Q曲線が山形特性であること
  2. 配管途中に気相溜まりがあること
  3. 気相溜まりの下流側で流量調整を行っていること

これらの条件がすべて揃った場合にサージングが発生しますが、どれか1つでも対策を講じればサージングの発生を抑制することができます。

プラントの安全と効率的な運転を維持するために、これらの対策をしっかりと実施することが重要です。

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