電磁式流量計とは:原理と特徴を徹底解説

化学工学
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電磁式流量計

電磁式流量計は、ファラデーの法則を応用して、磁界を通過する導電性流体によって生じる電圧をもとに流速および流量を算出する装置です。

この技術は、流体の温度・圧力・密度・粘度の影響を受けることなく、体積流量を正確に測定できる点が特徴です。
しかし、導電性のない有機溶剤や気体は測定できません。

この記事では、電磁式流量計の原理や特徴、選定方法について詳しく解説します。

電磁式流量計の概要

電磁式流量計は、導電性流体が磁場を通過する際に発生する起電力を利用して、流量を測定する装置です。

ファラデーの法則を基にしており、電圧の変化を計測することで、流速および体積流量を求めます。

ファラデーの法則

ファラデーの法則は、磁場内を移動する導電体に電圧が誘起される現象を示しています。

この原理を電磁式流量計に応用することで、磁界の中を流れる液体が生み出す電圧を測定し、その液体の流量を計算することができます。

また、電磁式流量計は、流体の温度や圧力、密度や粘度などの変化にほとんど影響されないため、非常に高精度な流量測定が可能です。

しかしながら、導電性のない液体や気体は測定できないため、これらの用途には他の種類の流量計が必要になります。

動作原理:フレミングの右手の法則とファラデーの法則

電磁式流量計は、フレミングの右手の法則に基づいて起電力を計測します。

この法則は、導電体が磁界内を移動する際に、垂直方向に力が働き、その力が電圧として現れる現象を説明します。

電磁式流量計の構成要素

電磁式流量計は、以下の主要な部品から構成されています。

  • 励磁コイル:磁場を生成するために使われるコイル
  • コア:磁場の中心となる部分
  • 電極:流体が生じさせた起電力を取り出すための電極
  • 変換器:取り出した電圧を増幅し、流量を計算するための装置

これらの部品が連携して、流体が管内を通過する際に生じる起電力を測定し、それを基に流量を計算します。

流体が右側から左側に流れている状態で、磁界が上から下向きに加わると、フレミングの右手の法則に従う向きに起電力が発生します。

この起電力を管側面の電極で取り出し、変換器で増幅・計算することで、最終的な流量が算出されます。

ファラデーの法則による数式

ファラデーの法則を応用した電磁式流量計では、以下の数式が成り立ちます。

$$
E = k \cdot B \cdot D \cdot v
$$

ここで、

  • E:起電力 [V]
  • k:検出器固有の定数
  • B:磁束密度 [T]
  • D:測定管内径 [m]
  • v:平均流速 [m/s]

この式から、体積流量 Q [m³/s] は次のように表されます。

$$
Q = \frac{\pi D^2}{4} \cdot v
$$

起電力 E は流速に比例するため、この数式により正確な流量が算出できます。

電磁式流量計の特徴

電磁式流量計は、以下のような特徴を持っています。

  • 流体の温度・圧力・密度・粘度の影響が少ない
    流体の性質が変化しても、体積流量の測定精度は高く保たれます。
  • 導電率の影響が小さい
    導電率が20 µS/cm以上の流体であれば、測定における影響はほとんどありません。
  • レンジアビリティが大きい
    50~300:1の広いレンジアビリティを持ち、測定範囲を簡単に変更できます。
  • 高精度の測定が可能
    測定精度は非常に高く、誤差は指示値の約0.5%程度です。
  • 圧力損失がない
    流体が装置内を通過しても圧力損失が生じないため、エネルギー効率に優れています。
  • 可動部がなく、保守が簡単
    流量計内部に可動部がないため、保守やメンテナンスの手間がほとんどかかりません。
  • 固形物や気泡を含む液体の測定も可能
    多少の固形物や気泡が含まれている液体でも測定可能です。
  • 腐食性流体の測定に適している
    ライニングや電極の素材選定次第で、腐食性の高い流体も安全に測定できます。
  • 正逆流の測定が可能
    流体がどちらの方向に流れても測定できます。

電磁式流量計の選定

電磁式流量計を選定する際には、口径と流速が重要な要素です。

流速が0.3~10m/s程度となるような口径を選定します。
推奨流速は以下の通りです。

  • 一般的な推奨流速:1~5m/s
  • 摩耗性のある流体の場合:3m/s以下
  • 付着しやすい流体の場合:3m/s以上

ライニング材質の選定

測定管内のライニングは、流体に応じて適切な素材を選定する必要があります。

以下は主要なライニング材質の特徴です。

材質測定流体例特徴備考
PFAフッ酸、塩酸、酢酸などの腐食性流体耐食性・機械的強度が高く、耐付着性に優れる適用温度:-10~160℃
ポリウレタンゴム上水、下水、工業用水耐摩耗性に優れ、土砂混じりの汚水に適する適用温度:0~40℃
セラミック硬質スラリー、腐食性流体耐摩耗性が高く、高温・高圧にも耐える適用温度や圧力条件で選定
ライニング材質の選定

電極材質の選定

電極材質も流体の性質に応じて選定します。

以下は代表的な電極材質の特徴です。

電極材質測定流体例特徴
SUS316L上水、下水、海水一般的な用途に適するが、強酸や塩化物には弱い
タンタル酢酸、塩化第二銅、硫酸腐食性の強い液体に適する
白金-イリジウム酢酸、次亜塩素酸ナトリウムほとんどの薬品に対応可能
電極材質の選定

まとめ

電磁式流量計は、導電性流体に対して非常に高精度な流量測定を可能にします。

流体の温度や圧力の影響をほとんど受けず、広範囲の用途で使用できるため、工業用プロセスや水処理施設などで広く利用されています。

ただし、導電性のない液体や気体の測定には適さないため、用途に応じた適切な選定が必要です。

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