塑性とは

CAE用語
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塑性

一言で表すと、、

塑性(そせい)とは、材料が外力を受けた際、その力が除去されても元の形に戻らず、永久変形を残す性質のことです。

塑性は特に金属材料において重要な特性であり、機械加工や構造設計において重要な役割を果たします。

概要

材料に外力を加えた場合、最初はその力に応じて変形しますが、一定の限界を超えると、力を取り除いても元に戻らない「永久変形」が残ります。

この永久変形を引き起こす材料の性質を「塑性」と呼びます。

塑性は、材料の弾性域(力を取り除くと元に戻る領域)を超えた後に現れます。
弾性域では、材料は力に応じて変形し、力を取り除くと元に戻りますが、塑性域では一度変形すると元に戻りません。

この変形が製造プロセスや機械加工において重要な役割を果たし、金属の加工や成形に利用されています。

イメージ

塑性のイメージをつかむために、次の例を考えてみましょう。

  • 金属の曲げ: 金属の棒を曲げたとき、最初は少し力を加えると曲がっても元に戻ります。しかし、力を強くしすぎると、棒は完全に戻らなくなり、曲がったままの状態になります。この状態が「塑性変形」です。
  • 粘土の成形: 粘土を手で握ると、その形が変わり、手を離しても元に戻りません。このように、形を自由に変えた後も元の形に戻らない性質が塑性の具体的な例です。

このような永久変形を許容することで、金属加工や製品の成形において様々な形状を作り出すことが可能になります。

定義

塑性は、外力が除去されても材料が元の形に戻らない現象であり、材料が降伏応力(外力により弾性変形から塑性変形に移行する境界となる応力)を超えると発生します。

塑性変形を定義する際に重要な概念が応力-ひずみ曲線です。

引用元:https://www.an.shimadzu.co.jp/service-support/analysis-basics/testing-machine/stress-strain-diagram/index.html

応力-ひずみ曲線は、材料に力を加えたときの応力と変形(ひずみ)の関係を示します。この曲線は、次のような領域に分けられます。

  1. 弾性変形領域: 材料が外力を受けても、力を取り除けば元に戻る範囲です。ここでは、応力とひずみは線形の関係にあり、フックの法則が成立します。
  2. 降伏点: 材料が弾性変形を超え、塑性変形を開始する点です。この降伏点を超えると、材料は永久変形を起こします。
  3. 塑性変形領域: 降伏点を超えた後、材料は力を取り除いても元に戻らず、塑性変形を残します。この領域では、応力とひずみの関係が非線形となり、材料は永久的に変形します。

$$
\sigma = \frac{F}{A}
$$

$$
\varepsilon = \frac{\Delta L}{L}
$$

  • \( \sigma \) :応力(stress)
  • \( F \) :力(force)
  • \( A \) :断面積(cross-sectional area)
  • \( \varepsilon \) :ひずみ(strain)
  • \( L \) :元の長さ(initial length)

材料が降伏応力を超えると塑性変形が始まり、弾性域での一時的な変形とは異なり、力が除かれても変形はそのまま保持されます。

降伏応力の詳細な説明はこちら

CAEにおける重要性

CAE(コンピューター支援工学)において、塑性変形の正確なシミュレーションは、構造解析や製造工程における材料の挙動を予測する上で非常に重要です。

以下の理由から、CAEで塑性理論を取り入れることが不可欠です。

  1. 成形・加工プロセスの最適化: 金属の曲げ加工やプレス加工、鍛造などでは塑性変形が利用されます。CAEを用いて塑性変形のシミュレーションを行うことで、最適な加工条件を見つけ出し、品質向上やコスト削減に貢献します。
  2. 破壊の予測: 材料が降伏点を超えた後、どの程度の応力で破壊に至るかをシミュレーションで予測することができます。これにより、部品や構造物の安全性評価が可能となり、適切な材料選定や設計変更を行うことができます。
  3. 疲労解析: 繰り返し荷重を受ける材料は、累積した塑性変形によって疲労破壊に至ることがあります。CAEを用いた疲労解析は、このような塑性変形の影響を含めた長期的な耐久性評価に役立ちます。
  4. 熱応力と塑性の連携解析: 金属材料は、温度変化により応力が発生し、塑性変形が生じる場合があります。CAEでは、温度変化と塑性変形の影響を同時に解析することができ、熱による材料の劣化や変形を予測するのに役立ちます。

物理的意味合い

塑性は、材料内部の原子レベルでの結晶構造の滑りや欠陥移動によって生じます。
これには、転位と呼ばれる原子レベルの不完全さが関与しており、これが移動することで材料が塑性変形を示します。

  1. 転位の移動: 材料に外力が加わると、結晶内部の転位が動き始め、これによって永久的な変形が起こります。この転位の動きが塑性変形の根本的な原因です。
  2. ひずみ硬化: 材料が塑性変形を繰り返すと、転位が絡み合い、材料が硬くなり(強度が増加)、さらなる塑性変形が難しくなる現象です。この現象は「ひずみ硬化(strain hardening)」と呼ばれます。
  3. クリープ: 高温での長時間にわたる応力により、材料がゆっくりと変形する現象を「クリープ」といいます。塑性変形が長時間にわたって進行する場合、この現象が重要となります。

塑性変形の物理的背景を理解することで、材料の設計や加工時にどのように変形するかを予測しやすくなります。

まとめ

塑性とは、材料が外力により永久変形を残す性質のことです。弾性変形とは異なり、降伏応力を超えた後の材料は、力が取り除かれても元に戻りません。この特性を利用することで、金属の加工や成形が可能になります。

CAEにおいて塑性変形のシミュレーションを行うことは、材料の成形加工の効率化や、部品の破壊予測、長期

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