固液撹拌とは:粒子の分散状態と最適な撹拌回転数について解説

化学工学
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固液撹拌

固液撹拌は、化学プロセスや材料処理において非常に重要な役割を果たす操作の一つです。

粒子の沈降防止や混合、スラリー化など、多岐にわたる目的で行われます。

本記事では、固液撹拌の目的、粒子の分散状態、そして撹拌回転数の最適化について解説していきます。


固液撹拌の代表的な目的

固液撹拌は、様々な理由で実施されます。

以下に代表的な目的を挙げます。

  • 粒子の沈降・堆積防止
    撹拌を行うことで、重い粒子が槽底に沈降して堆積するのを防ぎます。
  • 粒子の浮上・分離防止
    浮上しやすい粒子が液面に集まり分離しないよう、液全体に均一に分散させます。
  • 粒子の混合・スラリー化
    粒子を液体中に均一に分散させて、スラリー(固液混合物)を作り出します。
  • 固液間の物質移動促進
    撹拌により、固体と液体の接触面積を増やし、反応速度や物質移動を向上させます。
  • 凝集粒子の細分化・分散
    凝集した粒子を分散させ、均一な粒径にすることで、化学反応を効率化します。
  • 粒子の溶解促進
    粒子を液体中で溶解させる際、撹拌によって溶解速度を高めます。
  • 晶析
    固体が溶液中で結晶化する際、撹拌で結晶の成長を促します。

固液撹拌における粒子の分散状態

固液撹拌では、固体粒子がどのように液体中で分散されるかが、プロセスの成功に大きく影響します。

ここでは、液体よりも比重の大きい粒子を撹拌翼で分散させる場合について、回転数による分散状態の変化を5段階に分けて説明します。

1. 槽底に沈殿

撹拌翼が停止しているか、非常に小さい回転数の場合、粒子は槽底に沈殿したままです。この状態は、粒子と液体を分離する場合には望ましいですが、固液撹拌としては不十分です。

2. 粒子が巻き上がり始める

撹拌回転数が少し増加すると、粒子が撹拌翼の流れに引き寄せられ、徐々に巻き上がります。

しかし、この段階ではまだ十分に分散しておらず、粒子の分布も不均一です。

3. 撹拌翼より高い位置まで粒子が分散

回転数がさらに増加すると、粒子が撹拌翼よりも高い位置まで分散するようになります。

この状態では固液間の接触面積が増え、物質移動や反応が進みやすくなりますが、まだ槽底に沈殿した粒子が残っています。

4. 完全浮遊状態

撹拌回転数を増加させると、粒子が槽全体に浮遊するようになります。

この完全浮遊状態では、粒子全体が液体と接触しており、最大限の物質移動が可能です。

撹拌回転数が粒子浮遊限界速度(Njs)に達した時、この状態が実現します。

5. 均一分散状態

回転数をさらに上げると、粒子が液体中に均一に分散されます。

スラリーとして抜き出す際には、この均一分散状態が最も望ましいです。


固液撹拌の最適な撹拌回転数の設定

固液撹拌において、最適な回転数は目的に応じて異なります。

特に、物質移動を目的とする場合、回転数の設定が重要です。

粒子浮遊限界速度Njs

物質移動が重要な場合、撹拌回転数は粒子浮遊限界速度(Njs)以上で設定するのが一般的です。

Njsは、粒子が槽底に滞留しない完全浮遊状態を維持するための最低限の回転数です。

Njs未満の回転数では、物質移動係数が大きく増加しますが、Njsを超えるとその増加率は低下します。
さらに、撹拌回転数が極端に高くなると、液面から気体が巻き込まれ、固液間の物質移動が阻害されることもあります。

浮遊限界撹拌速度の詳細な説明はこちら

固液撹拌のスケールアップ

固液撹拌をスケールアップする際には、撹拌回転数や撹拌翼の設計を適切に変更する必要があります。

Zwieteringの式を用いて、スケールアップ後の回転数を計算できます。

撹拌回転数をNjsに基づいて設定すると、効率的な撹拌が可能になりますが、混合性能や動力消費のバランスも考慮する必要があります。

撹拌装置のスケールアップに用いられる回転数指標の説明はこちら

まとめ

固液撹拌では、粒子の分散状態を把握し、最適な撹拌回転数を設定することが重要です。
特に、粒子浮遊限界速度(Njs)は設計の目安となり、物質移動を効率化するための基準となります。

スケールアップ時には、混合性能や動力のバランスを考慮して、柔軟に対応することが必要です。

撹拌プロセスの最適化を行い、効率的な固液撹拌を実現しましょう。

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