ポアソン比とは:材料の弾性挙動と横弾性係数を解説

CAE用語
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ポアソン比

一言で表すと、、

ポアソン比は、材料が引張りや圧縮を受けた際の横方向の変形の割合を示す重要な指標です。

概要

ポアソン比(Poisson’s Ratio)は、材料が外力を受けたときに生じる変形挙動を理解するための基本的な物理量です。具体的には、材料に引張り力が加わったときに縦方向に伸びる一方で、横方向に縮む割合を示します。逆に、圧縮力が加わった場合は、縦方向に縮み、横方向に広がります。この横方向の変形が、縦方向の変形に対してどれだけの割合で発生するかを表すのがポアソン比です。

イメージ

ポアソン比を直感的に理解するためには、例えばゴムバンドを引っ張る状況を想像してみてください。ゴムバンドを引っ張ると、長さが増加すると同時に幅が狭くなります。このときの幅の縮み具合が、ポアソン比で表されます。逆に、コルクのような材料は、引っ張っても横方向の変形がほとんど見られないため、ポアソン比が非常に小さくなります。

定義

ポアソン比 \( \nu \) は、以下のように定義されます:

$$
\nu = -\frac{\epsilon_{\text{横方向}}}{\epsilon_{\text{縦方向}}}
$$

ここで、\( \epsilon_{\text{横方向}} \) は横方向のひずみ、\( \epsilon_{\text{縦方向}} \)​ は縦方向のひずみを表します。通常、ポアソン比は0から0.5の範囲にありますが、実際の材料では0.2から0.4程度の値をとることが一般的です。

横弾性係数との関係

ポアソン比と密接に関連する物理量に横弾性係数(Shear Modulus, \( G \) )があります。横弾性係数は、材料におけるせん断変形に対する抵抗を示す値であり、以下の関係式で表されます:

$$
G = \frac{E}{2(1 + \nu)}
$$

ここで、\( E \) はヤング率、\( \nu \) はポアソン比です。この式からわかるように、横弾性係数はポアソン比とヤング率に依存しており、材料の弾性特性を理解する上で重要な役割を果たします。ポアソン比が増加すると横弾性係数は減少するため、材料の変形挙動が変わることを意味します。

CAEにおける重要性

CAE(Computer-Aided Engineering)において、ポアソン比と横弾性係数は、応力解析や変形解析において不可欠なパラメータです。特に、複雑な形状や異なる材料が組み合わさった構造物のシミュレーションでは、これらの値が材料の弾性挙動を正確にモデル化するための重要な役割を果たします。

例えば、複合材料の設計においては、各材料のポアソン比や横弾性係数を考慮することで、全体の挙動をより正確に予測することが可能になります。また、これらの値は、ヤング率と共に、材料の弾性特性を包括的に理解するための基礎となります。

物理的意味合い

ポアソン比と横弾性係数の物理的意味は、材料内部の原子構造や分子間の結合力に依存します。ポアソン比が高い材料は、引張りや圧縮に対して横方向に大きな変形を示す傾向があります。逆に、ポアソン比が低い材料は、横方向の変形が少ないため、より剛性が高い材料といえます。

例えば、ゴムはポアソン比が高く、引張りによって大きく変形します。一方で、金属材料はポアソン比が低く、比較的変形が少ないです。このような材料特性の違いを理解することで、設計や解析において適切な材料選択が可能になります。

まとめ

ポアソン比は、材料が外力を受けた際の横方向の変形を示す重要な物理量です。CAEにおいては、材料の弾性挙動を正確に解析するために不可欠なパラメータであり、ヤング率や横弾性係数とともに、材料特性を総合的に理解する上で重要です。ポアソン比と横弾性係数の理解を深めることで、より信頼性の高い設計や解析が可能となります。

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