ヘアピンコイルとは:理論と設計時の注意点

化学工学

ヘアピンコイルは、ヘリカルコイル(螺旋コイル)の巻き径が小さく、特に限られたスペースでの使用を目的に設計されたコイルです。

主に、複数個を槽内に設置することが多く、マンホールからしか搬入できないような狭いスペースでも効果的に使用できるのが特徴です。

しかし、その設計にはいくつかの課題もあり、特に滞留部の発生が懸念されるため、選定時には慎重な判断が求められます。

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ヘアピンコイルの基本構造

ヘアピンコイルは、その名前の通り髪留め(ヘアピン)のような形状をしており、通常のヘリカルコイルと比較して巻き径が小さく設計されています。

小型でコンパクトなため、装置の内部に効率的に設置でき、スペースに制約のある装置で特に有用です。

使用例

  • マンホールからの搬入が必要な設備:
    特に狭い空間に設置する必要がある場合、ヘアピンコイルは有効です。
    例えば、既存設備の改修や、工場の限られたスペースに新しい伝熱装置を導入する際に採用されます。
  • 槽内設置:
    複数のヘアピンコイルを槽内に設置することで、限られた空間内で伝熱効率を高めることができます。

ヘアピンコイルのメリット

コンパクトな設計

ヘアピンコイルの最大の利点は、コンパクトであることです。

これにより、マンホールからの搬入が必要な狭いスペースにも対応でき、機械装置や伝熱機器の設置が容易になります。

また、複数のコイルを配置することで、伝熱効率を最大限に引き出すことが可能です。

多様な配置が可能

小型であるため、複数のコイルを様々な角度や位置に設置することで、設置場所の限界を克服することができます。

これにより、伝熱効率を向上させることが可能です。


ヘアピンコイルの課題と設計時の注意点

ヘアピンコイルにはいくつかの課題があります。

特に、滞留部(デッドスペース)の発生リスクが高く、伝熱効率の低下や流体の流れの悪化が懸念されます。

滞留部の発生

ヘアピンコイルは、巻き径が小さいため、流体がコイルの周囲で滞留しやすくなります。

この滞留部は伝熱効率を大幅に低下させる原因となるため、設計段階での注意が必要です。

滞留部ができると、流体が停滞し、効率的な伝熱が行えなくなります。

伝熱効率の低下

ヘアピンコイルは、通常のヘリカルコイルよりも伝熱面積が小さいため、伝熱効率がやや劣ることがあります。

特に、複数のコイルを使用しても、滞留部の発生によって伝熱効率が損なわれるリスクがあるため、選定時には設計者が十分な注意を払う必要があります。

設計時のポイント

  • 撹拌効果の向上:
    滞留部を最小限に抑えるためには、撹拌効果を高める設計が必要です。
    撹拌翼や適切な流速の設定が重要です。
  • 適切なコイル配置:
    槽内に設置する場合、複数のコイルを効率的に配置することが重要です。
    流体が均等に流れるような配置を心がけることで、伝熱効率を改善できます。

ヘアピンコイルの選定が推奨される場面

ヘアピンコイルの選定は、必ずしも常に最良の選択肢ではありません。

しかし、特定の場面では非常に有用です。

狭いスペースでの使用

マンホールを通して搬入しなければならないような狭いスペースでは、ヘアピンコイルが適しています。

特に、装置のスペースが限られている場合や、配管の経路に制約がある場合に有効です。

小型装置での使用

伝熱効率を高めることが求められる小型の伝熱装置では、ヘアピンコイルが役立ちます。

ただし、滞留部の発生を防ぐために撹拌翼や流体の流れの設計が重要です。


まとめ

ヘアピンコイルは、コンパクトな設計と多様な配置が可能なため、狭いスペースでの使用に非常に有用です。

しかし、その小さな巻き径が原因で滞留部が発生しやすく、伝熱効率が低下するリスクも伴います。

設計時には、これらの課題を踏まえた工夫が必要であり、撹拌効果や適切な配置が重要です。
特定の条件下では非常に効果的な選択肢となりますが、設計時には慎重な判断が求められます。

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